農業情報研究所農業・農村・食料アジア・太平洋地域ニュース 20021213

オーストラリア:塩害で80万haの農地が利用不能に

 12月11日、オーストラリア統計局は、塩害のために80万haのオーストラリア農地が使用不能になるという調査結果を発表した(Salinity on Australian Farms,12.11)。全土で200万haに塩害の兆候が見られるという。

 塩害は、地中の塩分が地表に上昇、土壌の塩分濃度を高めることによって起こる。これは自然に起きることであるが、乾燥(従ってまた地表を覆う植生の除去)や地下水位を上昇させる過剰な潅水によって増幅される。土壌中の塩分濃度が限度を超えれば、通常の作物は育つことができなくなり、農地としての利用が不可能になる。塩害は、乾燥地が多いオーストラリアの農業の宿命でもあった。今回の調査は、その全容を初めて明らかにしたものである。

 調査によれば、灌漑によるよりも乾燥による塩害の方が広い地域に広がっており、最も影響を受けているのは西オーストラリアである。ここでは7,000の農場(総数の51%)の120万haに塩害の兆候がある。56万7,000haが使用できない状態になっている。次いで、南オーストラリアの3,328農場、35万ha、ビクトリアの4,834農場、13万9,000haに影響が出ている。塩害の93%は穀作または畜産の大農場にかかわり、影響は小規模農場よりも大規模農場で大きい。

 調査は、3分の2の農業者が土地管理慣行を変え、植樹、穀物−牧草−飼料の輪作により、塩害との闘いを試みていることも明らかにしている。しかし、この闘いには障害があることも明かにしている。農業者の3分の1は資金がなく、また21%は時間がないという。

 今年のオーストラリアにおける冬季旱魃はすざましく、これは夏季にも続きそうである。今月初めに発表された農業資源経済局(ABARE)の最新予測によれば、夏作の播種面積は、旱魃のために全体で41%減少するだろうという。冬小麦生産は、旱魃により8年振りの低下となり、政府は経済成長率見通しを引き下げたほどであるが、これに続き、夏季作も59%減少、1982/83年の旱魃以来最低の200万トンになるという。米生産は70%減の38万トン、棉種子は65%減の33万7,000トン、ソルガムは52%減の85万5,000トンになると予測されている。このような旱魃は「エル・ニーニョ」のせいとされているが、気候変動(温暖化)によりますます頻繁になるという見方もある。それが塩害を一層助長するとすれば、オーストラリア農業は、旱魃による直接の被害だけでなく、塩害とのますます厳しくなる闘いにも挑まねばならないであろう。塩害は、オーストラリア農業の命運を左右する重大問題となってきたようである。それにもかかわらず、政府は、米国政府と同調、温暖化防止のための京都議定書を拒否する姿勢を崩していない。