中国黒竜江省 過剰開発による浸食で黒土を急速に喪失 穀物栽培地は孫世代に残らない

農業情報研究所

05.9.26

 中国最大の穀物生産地域である黒龍江省の黒土が自然植生の破壊を主因とする浸食で急速に失われつつある。このままだと50年以内完全に失われ、孫の世代が穀物を育てる土がなくなってしまう恐れがある。China Daily紙が伝えている。

 Land erosion poses threat to grain yield,China Daily,9.26
  http://www.chinadaily.com.cn/english/doc/2005-09/26/content_480753.htm

 黒竜江省水資源部の発表によると、省の全土の4分の1が多少なりとも土壌浸食をこうむっている。原因は、風や雨が土壌を運び去ることを可能にする省自然植生の破壊に帰せられている。穀物の高収量を保証する黒土は、年に3億㎥の劇的な速度で消えている。失われた国土に含まれる窒素、カリ、リンのような必須栄養素は500万トンの標準肥料に相当する。土壌浸食は毎年、穀物収量を推定2kgから4kg減らす原因になっている。発表によると、省の黒土層は毎年1cmずつ減っている。水資源部の水・土壌保全事務所で働くLiu Yan氏は、「現在の開拓・浸食率から判断すると、土壌は50年以内に完全に失われる」と言う。

 黒土は、寒冷な気候の下で、長い時間の間に植物死体が腐食することで形成された。それが有機質に富み、耕耘も易しいことはよく知られている。1950年代の大規模開拓以前の黒竜江の黒土層の厚さは60-80cmもあった。今では平均で20-30cmしかない。彼は、「それは1cmができるのに400年もかかるから、再生産できない最も価値ある自然資源の一つだ」と言う。また、黒竜江農業科学研究所のGuo Jingchun氏は、「我々は今、孫世代が使うはずの土地を使っている。これは取り越し苦労ではない。人為的要因が巨大な土壌浸食を引き起こしている」と言う。

 彼によると、過剰な開拓を通じて黒土に与えた損害は、通常ならば3世代分の損害に等しい。「この趨勢が続けば、我々の孫は、明らかに穀物を栽培する土地が何もなくなる」。

 彼によると、人工肥料の広範な使用が黒土にさらなる”内部損害”を引き起こしている。植物は使用される肥料の25%ほどを吸収できるだけで、残りは土の中に残る。それは徐々に土壌を硬化させ、土が砂に変わる過程を加速する。

 世界には中国北西部の黒土地帯に並び、ウクライナ平原や米国のミシシッピに二つの広大な黒土地帯がある。これら二つの黒土地帯でも、開発の進展とともに厳しい浸食が起きた。1920年代、”ブラック・ハリケーン”が二つの黒土地帯の共通の特徴だった。両地帯は、風を和らげるために木を植え、また季節ごとに異なる作物を栽培することを決めた。これにならい、黒竜江省も二つの主要河川沿いの一連の植林プロジェクトで、大規模な土壌保全キャンペーンを始めたという。

 これは、食料増産のための自然植生の破壊が地球の限界を超え、食料生産そのものを脅かすところまできていることを示す典型例であろう。