中国 2010年までの耕地面積維持目標は達成困難 土地管理強化へ

農業情報研究所(WAPIC)

06.6.24

  チャイナ・デーリー紙によると、中国土地資源部の孫文盛部長が23日、土地管理法20周年記念の会合で、耕地面積を1億2000万haに維持するという第11次5ヵ年計画(2006-2010年)の目標を達成するのは極めて困難であることを明らかにした。耕地がさらに失われるのを防ぐために、土地管理を強化するという。

  Ministry vows to curb loss of farmland,China Daily,6.24
  http://www.chinadaily.com.cn/china/2006-06/24/content_625068.htm

 この報道によると、中国の耕地面積は、1996年には1億3000万haだったが、昨年は1億2200万haにまで減少した。つまり9年で800万ha減ったのだから、年間平均で88万haが失われたことになる。この率で耕地が減れば、2010年までの5年間に、440万haが失われれ、2010年の耕地面積は2億1760万haとなり、目標を240万ha下回ることになる。

 他方、現在の国民一人当たりの耕地面積は0.093haで、世界平均の3分の1に過ぎないが[FAO統計によると、世界全体の耕地面積は約14億ha、人口は約60億だから、一人当たり耕地面積は0.233haとなる。中国の一人当たり耕地面積はその40%ほどということになるーWAPIC]、人口は2030年には15億のピークに達するから (Population to peak at 1.5b in 2030s,China Daily,6.23)、この数字はさらに減少することになるという。増加するのは人口だけではない。肉食の増加でますます多くの家畜も養わねばならない。これ以上の耕地減少は国の食料安全保障も危うくするだろう。

 部長は、このような耕地減少を抑えるために、土地管理法を厳格に執行し、土地を違法に利用する者に厳罰を科すと言う。というのも、土地の違法な占拠と利用が国中に広がっているのが耕地を減少させる一因となっているからだ。

 違法な占拠と利用は地方政府に後押しされている場合も多い。土地資源部の統計によると、最近年の建設プロジェクトの34%が違法に取得された土地を使っている。2004年10月から2005年5月まででは、建設用地の50%が違法に取得されたものだった。

 当局の承認なしでの農地の非農業用途での利用、地方政府とディベロッパーの間での袖の下取引、魅力的投資の名での開発ゾーン・宅地・ゴルフコース建設などが横行しているという。

 国家人民会議が送った2004年土地管理法実施状況監視団は、これまでに4445の開発ゾーンを違法として指定を取り消し、土地を非農業用途に取り上げられた農民は総額17億9000万ドルの補償金を支払われた。

 土地資源部は先月、土地利用統制を強化し、固定資産への過剰投資を抑制するように地方当局に指示する通知を出した。さらに、土地監視システムの設置も計画している。国を8地域に分け、それぞれに土地監視官を派遣する。土地監視官は、地方政府の土地政策と慣行を監督する権限を与えられるという。

 しかし、農民からの土地の違法な取り上げの取り締まりの強化はこれでに何度も表明されてきた。新たな土地管理策がどこまで成果を上げられるかは不透明だ。開発・経済成長至上主義を改めないかぎり、管理をかいくぐる違法行為が次々と現れるだろう。監視が国の隅々に及ぶには、中国の国土は余りに広すぎる。衣食足りた人々が礼節を忘れ、怪しげな利殖に走るのを有効に罰せられない日本の姿がダブる。