オーストリラリア 干ばつで穀物が大減収 草も枯れて家畜群も崩壊の危機

 農業情報研究所(WAPIC)

06.9.20

  オーストラリア農業・資源経済局(ABARE)が、冬季の記録的少雨のために今年の穀物収穫は大減収になるという予測を発表した。1700万トンしか収穫できなかった最悪の干ばつ年である2002-2003年以来の低収量となるという。

 australian crop report(06.9.19): http://www.abareconomics.com/interactive/cr_sept06/

 夏は記録的に暑く、秋も記録的に乾燥したために、冬作物の作付けが大幅に遅れた。土壌水分が干上がっているために作物成長には降水が必要だったが、とりわけ8月は記録的少雨だった。2006-07年の総作付け面積は1860万haでおよそ15%減少、多くの地域の成長季の天候条件のために、冬作物の収穫量は前年度に比べて36%減り、2600万トンになるという。

 主要冬作物のうち、小麦作付け面積は14%減少して1110万haになる。生産量は35%減少して1640万トンと推定される。大麦生産は41%減少、580万トンになる。カノーラ(ナタネ)はこの10年で最低、77万5000トンになるという。

 干ばつは、オーストラリアの穀物の輸出能力ばかりか、国内需要に応える能力さえ損なうことになりそうだ。価格の大幅上昇がなければ、農家所得の大幅低下も避けられない。

 その上、極端に乾燥した冬は、夏作物の作付けにも影響を与える。その確保には春の降水が不可欠であるが、平均的な春の降水を仮定すると、米やワタなどの灌漑作物の水利用の可能性の減退を反映、夏作物の作付け面積は10%の減少が予測される。主要米栽培地域であるリヴァリーナでは、米栽培面積は57%減少すると予想されている。

 干ばつに痛めつけられているのは穀作農民だけではない。春の放牧に出す放牧場にも草はない。飼料価格は高騰、購入飼料には手がでない。家畜が飲む水もない。農民は家畜の販売に走っている。一部地域では、と殺に出される牛と羊の数が1年前の倍になっている。8月の牛肉輸出は7月に比べて11%、昨年8月に比べて5.9%増えたというが、一旦破壊された牛群の再建には時間がかかる。将来は日本などの増大する牛肉需要も満たせなくなるだろう。

 A green belt that tightens by the day,smh,9.20
 Australia August Beef Exports +11% To 84,185 MT Vs July,Cattle Network,9.5
 Drought Hammers Australian Cattle Prices,Cattle Network,9.1

 同様な事態は米国でも生じている。米国農務省は、極度の干ばつで干草用の草と放牧地を失った30州の生産者に飼料とまぐさを提供する緊急救済措置を発動した。

 USDA,USDA Extends Emergency Grazing On CRP Acres In 30 States,9.15
 USDA Extends Emergency Grazing On CRP Acres In 20 States,Cattle Network,9.15
 NWA: Ranchers See Cattle Tax Break Extended,Cattle Network,9.15

 日本の消費者も、何時までも安い牛肉を大量に食べ続けられるなどと思わない方がよい。エタノール生産用トウモロコシ需要の増大に伴う飼料価格高騰で、大半の牛飼料を米国産の安価なトウモロコシに依存する国産牛肉(牛乳)も、早晩枯渇に向かうだろう。