輸入ハイブリッドコメ種子は”自殺種子” 種子交換運動を強めるフィリピン稲作農民 

農業情報研究所(WAPIC)

06.10.17

 フィリピン・北部ルソンのコルディリェラ地区の村々の農民グループが農民同志で在来コメ種子を交換するキャンペーンを強めている。このキャンペーンは、農民を殺しつつある輸入米と戦う様々な手段の一つで、16日に始まった世界食糧デーをもじった”世界食糧無しデー”を祝して発表されたという。

 Farmers start campaign vs importation,INQ7.net,10.17
  http://newsinfo.inq7.net/inquirerheadlines/regions/view_article.php?article_id=27042

 コルディリェラ地区の小農民連合グループ・Apit-TakoのAndres Wailan副議長は、農薬などの高価な資材の投入や政府が勧奨している輸入ハイブリッド種子利用が農村の在来品種を抹殺してきた、ハイブリッド種子は、在来種子を駆逐する故に、地方農民により”自殺種子”と呼ばれていると言う。

 この在来種子交換は、彼らが化学物質の利用とハイブリッド品種の侵入のために農地が劣化していることに気づいた2003年に始まった。食糧主権への女性の権利を唱導するInnabuyog-GabrielaのMila Lingbawan書記長によると、北部ルソン・マウンテン州・サガダのパランガイ(フィリピンの市町村を構成する最小単位の地方自治体)・スヨがこのキャンペーンのパイロット地区に選ばれた。マウンテン州の他の村々の農民たちも、カリンガ州やイフガオ州(いずれれもコルディレーラ行政地域に属する)の農民たちと種子を交換しているという。

 Innabuyog-GabrielaのVernie Yocogan-Diano議長によると、フィリピン政府は”緑の革命”を前進させる農業開発計画の下、外国政府、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、WTO、農芸化学多国籍企業の支援を受けて高価な作物、遺伝子組み換え(GM)作物を開発し、その利用を促進している。コルディリェラには地域住民を養う十分なコメがあるのに、米国、ヨーロッパ、日本からのコメ品種の輸入の継続が地域農民を追い払ってきた。輸入米はコルディリェラのコメ主産地であるカリンガにまで入っている。

 彼女は、政府が地域農業再興を助ける農民間のこの新たな運動を支援することを望んでいる。「政府は、農民の福祉を増進するためのこの努力にもっと資金を配分しなければならない。国の農業は利益本位になっており、政府はコミュニティレベルでは養うべき多数の人口があることを忘れている」と言う。

 これはフィリピンだけのことではない。

 バングラデシュでは、国内改良品種よりも成長期間が短く・高収量だという宣伝文句に引かれた農民が輸入ハイブリッド種に走るようになり、彼らの多国籍種子企業への依存が深まっている。民間輸入業者は 、ハイブリッド種子の開発と増殖に関する政府との技術移転の約束を無視、毎年のように新たなハイブリッド種を輸入して、国の非ハイブリッド高収量品種よりも少なくとも20%は収量が多いと宣伝している。

 農業研究者は、輸入ハイブリッド種が短期間で一層多くの収量をもたらす証拠はないと、政府の厳重なチェックを要求している。このままでは、ハイブリッド種の輸入の増加が長年の研究を通して開発された地方品種を駆逐し、農民から種子を保存する彼らの権利を奪い取ってしまう ことを恐れているという。

 Catchy names, lucrative claims lure farmers into hybrid seeds,News from Bangradesh,10.13
 http://bangladesh-web.com/view.php?hidDate=2006-10-13&hidType=TOP&hidRecord=0000000000000000131832