中国 燃料エタノール用需要増大で「数年以内にトウモロコシ純輸入国に」の予測

農業情報研究所(WAPIC)

06.11.27

 チャイナ・デーリー紙によると、中国商務部内部者が、主として燃料エタノールへの加工需要の増大のために、中国が数年以内にトウモロコシの純輸入国に転じると見ている。

 商務部の統計によると、今年第3四半期までのトウモロコシ輸出は昨年同期に比べて68.3%減少して227万トンとなっているが、輸入は43倍も増加、6万トンに達した。石油価格の上昇で、多くの穀物企業がトウモロコシ主要生産省に加工施設を建設してきた。匿名の内部者によると、増大する加工能力が国内需要増加を増加させ、その結果として今年のトウモロコシ国内在庫は減っているが、来年はまだトウモロコシ生産が需要を上回るから、中国が来年にもトウモロコシの純輸入国に転じることはなさそうだ。しかし、数年以内にはそうなる可能性が高い。

 中国では、トウモロコシの大部分は燃料用エタノール、糖、動物飼料の生産に使われる。中国のトウモロコシ主要生産地域である東北部・吉林省にはこのための10以上の加工工場があり、これらの工場は年に600万トンを加工する能力を持つ。東北部の加工施設は、2008年までに年間およそ1500万トンを消費すると推定される。2004年には中国全体1380万トンがこのような加工用に使われたが、これは2005年には2500万トンに増え、今年は前半だけで1560万トンになっている。

 中でも燃料用エタノール生産のための消費が大きい。中国は、今やブラジル、米国に次ぐ世界第三の燃料用エタノール生産国になっている。昨年、890万トンが燃料用エタノールとアルコールの生産に使われたが、これはトウモロコシの工業的消費の44.5%を占める。エタノールメーカー、糖類生産者、飼料工場が国のトウモロコシ在庫を食い潰してきた。

 昨年は861万トンを輸出したが、関係者は、今年後半の輸出は予想されていた500万トンに達することはありそうもないと見る。他方、ますます多くの企業がトウモロコシの輸入を始めている。7月には、一糖メーカーが米国に5万トンの輸入を発注した。専門家によると、需要と価格の激動を避けるために、政府も加工工場の管理を強めているという。

 China to become net corn importer 'in a few years',China Daily,2006-11-24
  http://www.chinadaily.com.cn/china/2006-11/24/content_742266.htm

  とはいえ、中国は、都市化・工業化や土壌汚染・劣化で耕地が減少し、水不足も深刻化の一途を辿るなか、食肉消費の増大で増加する飼料用トウモロコシ需要の増加を、水田や小麦栽培地を犠牲にしたトウモロコシ生産の拡大で補ってきた。しかし、トウモロコシ収穫面積や単収の増加も限界に達している(図参照。データはFAOSTATによる)。そこにバイオ燃料用需要が加わるとすれば、トウモロコシ純輸入国に転じるのは確かに不可避であろう。安価な米国産トウモロコシに頼るわが国畜産ー特に酪農ーの先行きもますますはっきり見えてきた。