中国穀物生産 干ばつ・洪水・病虫害で大幅減産の恐れ 食料価格高騰に拍車!?

農業情報研究所(WAPIC)

07.8.30

  中国の秋季収穫穀物収量が極端な異常気象と病虫害で大幅な減収となりそうだ。中国の秋季収穫穀物は年間収穫穀物のおよそ70%を占める。国際穀物需給が逼迫するなか、既に高騰している中国の食料価格のみならず、国際穀物市況にも重大な影響を及ぼす恐れがある。

 チャイナ・デイリー紙が伝えるところによると、国家発展改革委員会が29日、今年は過去数年の平均を214万f上回る1,150万fの耕地が干ばつに襲われた。水資源部の数字は、洪水で970万fが冠水したことも示しており、これら災害に襲われた耕地は1億2,000万fの全耕地の6分の1に達したことになる。水資源部は、広範囲に広がった洪水と干ばつが続くならば、事態はもっと悪化する恐れがあると言う。

 そのうえ、詳細は不明だが、病虫害も例年になく深刻だ。農業部の農業技術普及センターは、累積で6,900万fの水田が虫害の影響を受けると予想している。メディアの今月初めの報告によると、国の穀倉の一つをなす四川では、先月末までに、少なくとも39万fの稲をウンカが食べつくした。四川ではこの16年で最悪の状況という。

 夏季の収穫は多少増えたが、今年の収穫では全体では大きく減ることになりそうだ。中国穀物協会は、「国際市場で食料供給がタイトになっていることを考えると、国内穀物生産の減少は、[既に急騰している]価格の一層の高騰につながる恐れがある」と言う。

 Autumn harvest under severe threat,China Daily,8.30
 http://www.chinadaily.com.cn/china/2007-08/30/content_6066944.htm

 これは、恐らく、中国国内の食料価格だけでなく、やはり既に高騰している国際穀物価格のさらなる高騰にもつながるだろう。

 小麦の国際需給は既に、昨年秋のオーストラリアの干ばつで国際価格が急騰するほどに逼迫していた。最大の生産国である中国、第二の生産国であるインドの生産が低迷、第三の生産国である米国もトウモロコシへのシフトで同様に生産が低迷するなか、主として人口増加のために、インドを筆頭とする南アジア、中東・アフリカ、ラテンアメリカ、東南アジアでの消費は増え続けている。90年から95年までの間に、インドの消費量は7,700万トンから1億トンに増えた。世界全体では3億6,800万トンから4億2,000万トンへと6,600万トンも増えた。ところが、世界全体の生産は56,900万トンから61,900万トンへと5,000万トン増えただけだ。在庫は、供給・消費の僅かな変動が価格暴騰を招くほどにまで食い潰されてきた。

 だから、先週末、カナダが干ばつによる減収を発表すると、シカゴ市場の小麦先物相場は一気に記録的レベルに急騰した。さらに、インド農相が備蓄在庫積み増しのため、今年のさらなる輸入入札を 求めたことから (STC issues new wheat import tender,Hindu Business,8.24
)、既に記録的レベルに達していたロンドン市場小麦先物相場も、先週末の159ポンド/トンから、一気に166ポンド/トンにまで跳ね上がった。さらに中国も不作となtれば、どこまで上がるかわからない。

 これは小麦についての話だが、小麦と同様に基礎食料(飼料)をなす米、トウモロコシ、大豆も、すべて類似の状況にある。もはや、安い穀物、安い食料の時代は完全に去ったと断言してもよさそうだ。最大の要因は、人口・穀物生産大国である中国とインドの穀物生産の停滞と(中国の米を除く)需要・消費の増大だ。