インドネシア 調理油国内価格沈静のためにパームオイル輸出税引き上げへ

農業情報研究所(WAPIC)

08.2.7

  インドネシア政府が高騰する調理油の国内価格を引き下げるべく、今月7日から粗パームオイル(CPO)とその派生品の輸出税率を国際価格の上昇に応じて引き上げることを決めた。

 ロッテルダムのCPO価格がトン当たり1,100-1,200ドルになれば、現在の輸出税率10%を15%に引き上げる。さらにロッテルダム価格が1,200-1,300ドルならば20%、1,300ドルを超えれば30%に引き上げる。ただし、現在の価格は未だ1,100ドルに達していないから、当面の輸出税率に変更はない。

 他方、CPO派生品の輸出にも新たな税率を設定する。派生品の国際価格が1100ドルを下回る場合には、CPOに対する輸出税率を1%、1,100-1,200ドルの場合に同様に2%下回る税を課す。従って、CPO輸出税率が15%の場合には、粗油ステアリンの輸出税率は13%となる。

 それだけでなく、精製油ステアリンのような加工のために大きな投資を要する派生品については、価格が1,100ドルを超えたときの輸出税率をCPOより4%引き下げる。また、バイオ燃料の輸出税率は、CPO価格が1,100ドルを下回る場合には2%、1,100ドルを超えたときには5%とする。

 製造業者に高付加価値製品の輸出を促すために、10kg未満のブランド輸出調理油に対する税率は非ブランド品よりも5%小さくする。また、国内市場における調理油の価格を引き下げるために、ブランド品・非ブランド品を問わず、国内で販売される調理油に対する付加価値税を政府が支払う。加えて、低所得者や中小企業に対する非ブランド調理油の販売に補助金を出す。

 Govt introduces new CPO export tax ,The Jakarta Post,,2.5

  ただし、このような措置で調理油の国内価格が下がると考えるのは甘そうだ。国内CPO生産者や産業界は、輸出税引き上げはCPO国際価格を押し上げるだけで、国内市場における価格の安定にはつながらないと見ている。

 生産者は、国内市場におけるCPO販売価格指標として世界価格を使う。今年のCPO生産量は1700万トンと推定されるが、インドネシア市場が吸収できるのはそのうちの400-450万トンだけだ。”供給の問題ではない”という。

   Indonesian producers worried CPO tax hike may boomerang on economy,ANTARA,2.6

 実際、輸出税引き上げのニュースは、大豆油国際価格の上昇とともに、マレーシアのCPO先物相場を一気に史上最高値に引き上げる要因となった。

 Commodity Roundup: Gains for CPO futures,Business Times,2.6
 
CPO(パームオイル粗油)先物相場(マレーシア:BMD:期近)の推移

 価格高騰の基本的原因は、世界、とくに中国やアジア途上国における需要の急増にある(下図参照)。価格レベルをもとに戻すことなど、いまや不可能とになっていると知るべきであろう。