専門家 豪州東部の干ばつは永久化の恐れ 世界から一つの穀倉地帯が消える?

農業情報研究所(WAPIC)

08.5.10

 オーストラリアのマレー・ダーリング流域委員会が、オーストラリア穀物生産の大半を担う流域農民にとって最悪、絶望的な最新干ばつ情勢を発表した。

 今秋のこれまでの降水量は平均以下で、3月と4月のマレー水系への流入量は極端に少なく、2007年に見られた記録的低レベルに近づいている。過去の記録が示すところでは、秋に乾燥すると、来るべき冬から春にかけてのマレー上流部への流入量が増えるチャンスは大きく減る。

 さらに、南・東部オーストラリア、つまりマレー・ダーリング水系流域地域の降水量と流量が、特に秋に減少するのは、地球温暖化に関連しているという証拠がますます増えているという。

 つまり、今世紀に入って既に3回の穀物大凶作をもたらしたこの地域の干ばつは、一向に終わる兆しが見えないばかりか、永続化する恐れがあるということである。

 River Murray System - Drought Update May 2008
 http://www.mdbc.gov.au/__data/page/1366/Drought_Update_Issue_13_-_May_2008.pdf

 これについて伝えるマスコミ情報によると、マレー・ダーリング委員会委員長のウェンディ・クレイク博士は、「残念ながら、改善の兆しはない」、「将来の見通しも良くない」、明らかに、これが永久化することを考えに入れる必要があると言う。

 Drought 'may never end',The Age,5.9
 http://www.theage.com.au/news/national/drought-may-never-end/2008/05/09/1210131244721.html

 クレイク博士によると、内陸部の一部湖沼、特にサウス・オーストラリアの低地部湖沼の水位は、記録史上初めて海面のレベルよりも下がった。

   一部流域の干ばつは非常に厳しく、2055年についての最悪の気候変動予測をも凌ぐ。それは予想以上に早くやってきた。水道水は年末まで供給できる。しかし、灌漑水の配分はゼロか、ごく僅かになる。2008-09年の配分は降水次第になるという。

 気象庁のミカエル・クーグラン気候センター長は、干ばつは永久的になる可能性がある、「我々は一層乾燥した時代に入りつつあるかもしれないことに目をつぶることはできない」と言う。

 彼によると、オーストラリア東部に雨をもたらすラ・ニーニョは終わりつつあり、乾燥をもたらすエル・ニーニョが来年早期には始まりそうだ。最近のエル・ニーニョは2005-06年にオーストラリアを襲った。典型的には3年から6年ごとにやってくる。 



 世界は、もはやオーストラリアの穀物を当てにできない時代に入ったようだ。昨年は、世界の米需給にも大きな意味を持つバングラデシュ、今年はミャンマー・イラワジデルタの水田が、サイクロンの壊滅的被害を受けた (右図)。今後、このような事態がますます増えるだろう。しかも、これの国々のこのような自然災害に対する防備は無きに等しい。

  そのうえ、石油・エネルギー価格は天井知らずの高騰を続ける。肥料価格も多くの途上国農民には手の出ないものになった。インドでは肥料や種子を買うための借金で首が回らなくなり、食べ物も買えずに飢えに苛まれる農民が次々と自殺に追い込まれている。

  しかし、日本の一部の”冷静な学者”によると、穀物価格上昇で世界の農民が増産を始めるから、そう長くない将来に需給は緩み、食料価格も下がる、食料危機などと大声で騒ぎなさんなということだ。