ベトナム 作物価格高騰で森林破壊が加速 繰り返される増産と森林破壊の悪循環

農業情報研究所(WAPIC)

08.5.27

 キャッサバ、ゴム、コーヒーなどの作物価格高騰でこれら作物を植えるための林地への侵入と違法伐採が急増、ベトナム・コントゥム中央高地の森林が急速に失われつつある。

 違反者はあらゆるトリックを使って森林を違法に開発する。県森林農場が管理するコントゥムの1万6000fの森林のうち、既に4400fが侵略された。過去5ヵ月だけでも、550fが地方住民により侵略された。樹木が切り払われた面積は日に日に増えている。この数字は、今日は4400fだが、明日は5000fになるかもしれないという。

 Locals blamed for Kon Tum deforestation,Viet Nam News,5.26
 http://vietnamnews.vnagency.com.vn/showarticle.php?num=01AGR260508

 このような森林侵略の誘因となっているのが、キャッサバ、ゴム、コーヒーの価格の急騰だ。キャッサバ生芋の価格は、100kg当たり5万ベトナムドン(VND、1VND≑0.0064円)から8万VNDに、乾燥芋の価格が、同じく8万VNDから13万VNDに増加した。ゴム、コーヒーの価格も同様に上昇、とくにゴムは以前の3倍の1キロ当たり1万9000NNDに跳ね上がった。

 違法伐採者は、夜中に森林火災を装うなどのトリックを使い、まんまと木を切り倒し、木材を違法に持ち去る。昼になると、切り払ったばかりの林地にキャッサバ、ゴム、コーヒーを植える。森林農場官は何が起きているのか分かっているけれども、16人のスタッフでは取り締まりもできない。必要な技術的手段もなければ、不法侵入者・伐採者を罰する権限もないという。

 他方、違反者を発見し、罰する権限を持つ省森林部森林管理保護班は、違反が起きたときに知らせる責任は森林農場にある、省は農場からの情報を検証するための監察班を作ったばかりで、45日後に詳細な問題解決策は草案ができると言う。なんとも悠長なことである。


 貧困、食料不足、食料増産、環境破壊の悪循環の歴史が、またも繰り返されようとしている。90年代、インドネシア政府は、米の自給を達成すべく、カリマンタンの100万fの泥炭湿地や森林を農地に変えた。しかし、計画された水田の造成には失敗、恐らくはインドネシア史上最大の環境破壊を引き起こす結果に終わった。泥炭地の生物物理的・水文学的特徴はすっかり失われ、地域の微気候も変わってしまった。

 しかし、湿地の農地への転換、大企業による森林の大規模モノカルチャー(とくにオイルパーム)・プランテーションへの転換は今も続く。それは肥沃な土壌の喪失、農業生態系の崩壊によって、農業をさらなる森林破壊、限界地に追い込むだけだろう。現在の食料品価格高騰、それに伴う食料危機は、食料増産を刺激し、この過程をさらに加速するだろう。

 ベトナムでも、この悪循環が始まる。