タイ 燃料価格高騰で水牛耕が復活

農業情報研究所(WAPIC)

08.6.12

  燃料価格のかつてない高騰で、タイ農民が機械耕から水牛耕への後戻りを余儀なくされ、水牛などの伝統農耕動物を持つ人々に新たな稼ぎ口を生み出している。バンコク・ポスト紙が伝えるところによると、ナコーン・ラチャシマ県のある村では、キャッサバ栽培者からの水牛需要が増えている。6頭の水牛の所有者は、村の中で水牛を賃貸ししているが、借用の予約は2週間先まで埋まっているという。

 BUY-TO-LET BUFFALOES,Bangkok Post,6.11
 http://www.bangkokpost.com/110608_News/11Jun2008_news07.php

  水牛は、耕耘面積1ライ(0.16f)当たり120バーツ(390円ほど)で雇えるが、機械所有者に頼めば250バーツを要求される。水牛の仕事は機械より遅いが、キャッサバの損傷が少ない。動物は、大型機械が入るのが難しい畝の間の狭い溝を歩くことができる。

 所有者は、水牛1頭で1日500〜600バーツを稼げると言い、借主のキャッサバ農民は26ライ(4f)を耕すために水牛を雇い、その働きに満足している、大変な金の節約になると言う。

 タイでは、何世紀もの間、水牛が農地耕耘、運搬など多様な用途で使われてきた。その利用は最近数十年の機械化で減少したが、燃料価格高騰で伝統的農業方法が人気を取り戻すことができたという。 


 日本でも馬や牛が田んぼの耕耘に、苗や収穫物などの運搬に、さらに馬小屋の敷きわらから作られる堆肥の給源として大活躍していたのは、筆者自身も手伝いとして農作業に参加していた、つい半世紀ちょっと前(戦後5〜10年ほど)までのことだった。しかし、たったこれだけの間に、馬耕用具も、運搬用具も、農家の庭先の馬小屋も、そしてこれらを利用する技能も、すべて跡形もなく消えてしまった。石油価格がどんなに上がっても、タイのように伝統農法復活とはいきそういもない。