洞爺湖サミット直前 インドがトウモロコシ輸出を禁止

農業情報研究所(WAPIC)

08.7.4

  世界的食料価格高騰を抑えるために食料輸出規制の自粛を求めることになりそうだというG8洞爺湖サミット直前の3日、インド政府がトウモロコシの輸出を10月15日まで禁止した。

 国内価格の高騰に音を上げた国内養鶏及びスターチ産業の要望に応えたものだ。トウモロコシ国内価格は昨年同期に比べてキンタル(100kg)当たり200ルピー上昇、950−1000ルピーに跳ね上がっている。養鶏業者とスターチ製造業者は、価格上昇の第一の原因とされる輸出の制限を要求してきたという。

 Maize exports banned till October 15,Hindu Business,7.4
 http://www.thehindubusinessline.com/2008/07/04/stories/2008070452920100.htm

 インドは2007-08年年度(10月-9月)、今までに250万トンのトウモロコシを輸出した。輸出は主に、主要生産地域である米国中西部の最近の洪水で増幅された”スカイロケッティング”な国際価格に引っ張られてのものだ。

 米国や中国に比べて運賃が安いために、東南アジアや西アジアの輸入国がインドからの輸入に惹きつけられるようになった。インドからの輸出価格はトン当たり300ドルで、シカゴ商品取引所の相場にほぼ等しい。

 この高価格が農民の増産意欲を掻き立て、インドは2007-08年、記録的な1854万トンを生産した(下表)。その半分はアンドラ・プラデシュ、カルナタカ、ビハールでの生産という。カリフ(初冬収穫作物)の作付面積も昨年より38%多い。輸出禁止がこの熱狂を冷ますかどうかが見所という。

 


 洞爺湖サミットの議論、どこを向いても間の抜けたものになりそうだ。

 輸出規制の禁止や自粛で国の食料安全保障確保の権利を棄てる国があるだろうか。もしそれを強要すれば、輸入国も輸入規制で国内生産・食料安全保障を確保する権利を放棄せなばならなくなる。

 G8各国が世界的な食糧危機に対応するために一定量の穀物を備蓄、非常時に市場に緊急放出して価格を安定化させる仕組みを創設することも特別文書に盛り込むという。今の危機は干ばつなどによる一時的な供給不足で起きた危機ではない。需要の増加に生産の増加が追いつかないことからくる構造的・長期的危機だ。そのなかで、長期にわたる一定の備蓄を強制すれば、ただでさえ減っている貧しい国・消費者に回る分が余計に減り、価格を一層吊り上げるだけだ。世界の一流指導者が考えるにしてはお粗末に過ぎる。

  バイオ燃料非難の大合唱も起きているが、これも、現在の食糧危機の根源―とりわけ世銀やIMFが推進してきた農業・食糧生産軽視の開発・農業政策―を覆い隠すだけである。