タイ 大量の政府備蓄米を政府間ベースで輸出へ 古米処分と米価維持?

農業情報研究所(WAPIC)

08.8.4

  タイ政府が7月末、政府備蓄米を政府間ベースでアフリカやアジアの国々に売却することで合意した。スラポン財務相によると、量や価格など詳しいことは今後詰めるが、価格は”友好”を基本としながら、国内価格への影響は避けねばならない。入札による米販売はまったく考えていないという。

 政府副報道官によると、タイ米購入を求めているのは、リベリア、イラン、ナイジェリア、ジプチ、バーレーンの中東・アフリカ諸国とマレーシア、世界食糧計画(WFP)ということだ。

 リベリアは25%白米を60万トン、イランは100%Bグレード白米を12-20万トン、ナイジェリアは5%破砕パーボイルド米(吸水させ、蒸して澱粉を糊化した後に乾燥したもの)の購入を求めている。ジプチは、3年間に毎年10万トンの白米、パーボイルド米、香り米を購入できないかと交渉している。バーレーンは40万トンの香り米の購入を計画、WFPは20-25万トンの25%白米を購入することになりそうだ。マレーシアもタイ米50万トンの購入を望んでいいる。

 大量の注文だから、政府は今後2ヵ月の間に210万トンの古米ストックが清算されると信じている。タイは、国内価格介入計画の結果として大量のストックを抱える傾向がある。生産者価格支持のために今年6月に始まった計画(タイ政府 生産者米価低迷で幹線道路封鎖と脅す米作農家に降参 高価格買い上げへ)で、ストックは22%も増えた。79万トン(精米ベースで47万4000トン)を買い上げ、ストックは1月の210万トンから257万トンに増えた。

 政府間取引は、どうやら古米処分促進と米価維持を狙ったもののようだ。米輸出協会も、これは国内価格を撹乱しないから正当な決定だと言う。外務省は、インド、パキスタン、ベトナムもこれら市場を拡大してきたから、タイ政府が備蓄米の流通を加速するように要請しているというから、競争相手に先んじての市場確保にこれを利用しようという意図もあるかもしれない。

 G-to-G rice sales for government stock,Bangkok Post,8.1
 http://www.bangkokpost.com/010808_Business/01Aug2008_biz39.php

 ところで、フィリピンに売る、スリランカ援助にまわすなどと取りざたされたわが国のミニマムアクセス米の”政府間”取引はどうなっているのだろうか。筆者の知るかぎりでは、フィリピン農業省の役人(匿名)の話として伝えられた次の情報があるだけである。

 「フィリピン政府は中粒米14万トン、長粒白米6万トンの供給をめぐって日本と交渉を続けている。日本は最初、20万トンのブラウン米の供給を申し入れてきたが、フィリピンは仕上げに追加コストがかかるために答えを留保した」(Business World,6.24:http://www.bworldonline.com/BW062408/content.php?id=054)。

 その成否どうあれ、もたもたする間に、米国際市場へのインパクトも、ミニマムアクセス制度そのものに関する論議へのインパクトも、すっかり薄れてしまったことだけは確かなようだ。 

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