タイ 広く使われている薬用植物由来農薬・生薬を危険物質指定

農業情報研究所(WAPIC)

09.2.11

 タイ産業省が、高価で有毒な化学農薬の代替品として農民間で広く使用されている13種の薬用植物を、生産と販売を規制すべき危険物質に指定した。農民や伝統的生薬の専門家は、これは隠れた化学企業優遇策ではないかと怒っている。

 Farmers up in arms at herb listing,Bangkok Post,2.11
 http://www.bangkokpost.com/news/local/11379/farmers-up-in-arms-at-herb-listing

 危険物質指定の告示は産業省が先月承認したもので、2月3日に発効した。危険物質委員会に一員である農業省が提案したこの告示は、これら13の薬用植物から作られる殺虫剤・除草剤・医薬品の生産者・製造業者・輸入業者・輸出業者に対し、委員会が出す安全・品質統制規則に従うべきことを要求している。

 従わなければ、6ヵ月の禁固か5万バーツ(現在、標準的な米=白100%B級の国内米価は2000バーツ/100kgほどだから、米2.5トンに相当する―農業情報研究所)の罰金、またはその両方を科される。

 農民弁護者は、植物性農薬の生産も、取引も、使用もできなくなるから、農業生産者が痛めつけられると言う。

 有機農業を推進するNGO・バイオタイ(Biothai)の Witoon Lianchamroonによると、農民や有機物質の生産者の登録、包装、検査のための支出が増える。安く、安全だからと、最近、多くの農民が輸入化学物質から植物性物質に切り替えた。多国籍化学企業を持ち上げようとする隠れた意図があるのではないかと疑う。

 代替農業ネットワーク(Alternative Agriculture Network)のコーディネーターであるTussanee Verakanは、委員会が最大の影響を受ける農民に相談することなく秘密裏に危険物質指定を決めたと批判する。

 彼女は、有機農業を促進し・化学物質の使用を減らそうとしている政府が、「有機農業の核心である有機物質に何故このような厳しい規制をかけるのか」と言う。

 他方、産業省は、指定には農民の利益を護る狙いがあると主張する。

 「告示は化学物質生産者の保護を意図したものではない」、「これら植物農薬は広く使われ、取引されている。規格の遵守の確保のために統制されるべきだ」と言う。

 彼によれば、危険部物質指定は薬用植物製品の促進を助けることになる。 


 それにしても、これらの代替農薬としての使用にどんな危険があるというのだろうか。一定の危険があるのは既知のことだろうが、今、何故この措置なのか、問題の核心は見えない。