中国農民は窒素肥料を3分の2も減らせる 収量維持で環境汚染削減

農業情報研究所(WAPIC)

09.2.17

 新たな研究によると、中国農民は窒素肥料の利用を3分の2も減らすことができる。16日に全米科学アカデミープロシーディング誌に発表された論文で、研究者は、中国における窒素肥料の過剰な利用は大気、土壌、水の汚染をもたらしており、農民は収量を減らすことなく肥料の使用を減らすことができると警告しているという。

 Nitrogen fertilizer warning for China,Nature News,2.16
 http://www.nature.com/news/2009/090216/full/news.2009.105.html

 Less is more approach to fertiliser could boost farmers,New Scientist.com,2.16
 http://www.newscientist.com/article/dn16614-less-is-more-approach-to-fertiliser-could-boost-farmers.html

  中国における肥料の使用は、科学者、政府、普及員により積極的に推進されてきた。その結果、穀物平均収量は1977年から2005年までの間に倍増した。この収量倍増のコストは、肥料利用の700万トンから2620万トンへの4倍近い急増だった。

 研究を率いた中国農業大学(北京)張福鎖教授は、「施された肥料窒素がどこへ行ったのか、現在の慣行はコスト効率的なのかどうか」を問題にする。食料・エネルギー需要が増加している折、これは差し迫った問題だとも言う。

 このような問題に取り組むために、研究チームは、中国東部太湖近くの小麦−米、中国華北平原の小麦−トウモロコシの二つの典型的二毛作システムを研究した。研究は、肥料施用が増えるほど作物の窒素吸収効率が減り、環境中に失われる窒素が増えることを示した。

 肥料窒素を追跡すると、経路は作物により異なるが、肥料窒素の20−50%が大気と地下水に漏れ出していた。中国華北平原の小麦とトウモロコシの農地は、アンモニア蒸発の結果として、それぞれ施用窒素の19%、25%を失っている。太湖地域では、硝酸が窒素ガスに転換される反硝化脱窒)の過程を通じ、水田からは36%、小麦畑では44%が失われた。硝酸は両地域で地下水・表流水にも漏れ出し、深刻な汚染問題も引き起こしている。

 次に、研究者は、土壌、灌漑水、大気からの窒素投入と窒素の喪失の両方を考慮して計算した肥料施用の最適レベルと通常の慣行を比較した。圃場実験で、適切に管理すれば、中国農民の平均的施用量の3分の1でも作物収量を維持できることが示された。

 スタンフォード大学の農業生態学者によると、中国農民は1fに600kgの肥料を使うが、米国の小麦農地では100kgを使うだけだ。メキシコ農民も250kgで、中国の数字は他の途上国に比べても多い。「現在の肥料使用のレベルは、地域レベルでも、世界的レベルでも、深刻な環境影響をもたらす」と言う。研究は、これを裏付ける。