中国農地土壌 窒素肥料の過剰使用で急速に酸性化 国の食料安全保障も脅かす 新研究

農業情報研究所(WAPIC)

10.2.12

  北京の中国農業大学の研究者が今週のScienceに発表した論文1)によると、農民による窒素肥料の大量の使用が中国農地の急速な酸性化を招いており、このままでは中国の農業生産力が削がれ、国民を養う能力も危うくなるという。筆者はこの論文の全文は未読だが、Nature Newsが紹介するその内容は次のとおりだ2)

 1980年代以来、中国の農作物収量は化学肥料の使用により増加してきた。2007年、中国の窒素肥料消費量は3260万トンに達し、1981年に比べると191%も増えている。研究者は、このような窒素肥料使用の増加が何をもたらしているかを知るために、既存のデータを使って8875の土壌サンプルのpHを分析、1980年代と2000年代の間の土壌の酸性度の変化を計算した。

 その結果、窒素肥料の過剰な利用が国中でおよそ0.5の土壌pH低下を引き起こしており、一部の土壌のpHは5.07にまで落ちていることが分かった(米など穀物やその他の換金作物の最低pHは6−7)。通常は、土壌のpHがこれほど落ちるには、最低でも100年はかかるという。

 一部地域では、酸性化が既に30−50%の収量低下を引き起こしている。この趨勢が続けば、一部地域の土壌のpHは3にまで落ち、いかなる作物も育たなくなることもあり得る。研究者は、窒素肥料のこのような大量使用が続けば、中国の食料安全保障が脅かされる恐れがあると言う。

 問題の解決策はただ一つ、農民教育だけだ。この研究者によると、中国の農民は過剰施肥がどんな結果を招くか知らない。葉っぱは見ても土壌への影響は見ない。育ちが悪いと、もっと肥料が必要だと考える。それが事態を悪化させている。農民は通常、必要量の2倍から3倍もの肥料を与えている。2005年に始まった政府の農民教育計画も、まだ十分に行き渡っていないという。

 1)Guo, J. H. et al.,Significant Acidification in Major Chinese Croplands,Published Online February 11, 2010;Science DOI: 10.1126/science.1182570
    Abstract:http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/science.1182570v1

  2)Acid soil threatens Chinese farms,Nature News,2.11
    http://www.nature.com/news/2010/100211/full/news.2010.67.html