農業情報研究所農業・農村・食料アジア・太平洋地域ニュース;2010年12月7日

オーストラリア農業資源経済科学局 穀倉地帯の大洪水でも冬作物は大豊作 品質は大きく低下

 オーストラリア農業資源経済科学局(ABARES)が12月7日、、オーストラリア東部の最近の大雨の冬作物品質への悪影響にもかかわらず、生産量は記録的レベルになると報告した。

 オーストラリア東部の多くの地域は、ごく最近まで理想的な作物生育条件に恵まれ、これが収量を記録的レベルに押し上げた。

 ただし、 ニュー・サウスウエールズ(NSW)の多くの地域やクイーンズランドでは、収穫期の雨のために品質が大きく低下する。穀粒は軟化、蛋白質含有量が減り、発芽する恐れもある。そのために、一部の小麦は家畜飼料としてしか使えなくなるだろう。大麦もモルト用のものが減り、飼料向けのものが増える。ただ、小麦、大麦のダウングレードの程度は、すべての収穫が終わるまで分からない。

 西オーストラリアの生産は作季を大きく下回り、東部諸州では品質が低下するが、全体としてみると、冬作物生産は昨季を22%上回る4320万トンに達する。主要冬穀物のうち、小麦の生産は、昨季の2190万トンから2680万トンへ、記録的レベルになると見込まれる。大麦は24%増の980万トン、カノーラ(ナタネ)は7%増の200万トンが見込まれるという。

 http://adl.brs.gov.au/data/warehouse/pe_abares99001763/ACR10.4_Dec_REPORT.pdf

 ただし、オーストラリア農業研究所(Australian Farm Institute)のミック・キーオー所長は、ABARESの予測はNSW全体で今後続く洪水を計算に入れておらず、予測の下方修正が予想されると言う。今週後半に最大150ミリ降るという気象庁の予報が正しいとすれば、一部は助かると見られている冠水した作物が全滅することになろうという。

  Wheat exports dip as farms face $3bn loss,Australian,12.7
  http://www.theaustralian.com.au/national-affairs/wheat-exports-dip-as-farms-face-3bn-loss/story-fn59niix-1225966637996

 なお、オーストラリア農業資源経済科学局は、2010年、オーストラリア農業資源経済局(ABARE)と農村科学局(BRS)が合併して作られた。

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