農業情報研究所農業・農村・食料アジア・太平洋地域ニュース:2012年12月15日

中国 耕地面積目標達成も、穀物自給目標はかなぐりすてた?

  中国土地・資源省が12月12日、中国の耕地総面積が3年連続で18億2400万ムー(1億2160万ヘクタール)を上回ったと発表した。

 2011年末現在の総耕地面積は18億2476万ムー、この年に5327万ムーが壊廃されたが4837万ムーが新に造成された。従って減少は49万ムーにとどまった。このように減少速度が減っていることからして、18億1800万ムーを2015年まで維持するという国の目標達成は保証できるという。

 とはいえ、この目標は穀物自給を維持するためにこそ設けられたものだ。耕地面積は維持できるしても、人口が増え続け、同時に経済成長・都市化に伴って肉食―飼料穀物需要―が増え続けるなかで、穀物自給は本当に達成できるのだろうか。

 2012年の穀物生産は5億8957万トンで前年を3.2%上回り、9年連続で増えたという。また、中央政府は、穀物生産を増やすべく、農地改良に290億元(46億ドル)を投じたという。

 China's farmland area steady for three years,Xinhua,12.12.13

 それでも、最近の中国は、穀物自給という目標を断念したかのようだ。数年前まで、中国は穀物をほぼ自給していた。ところが、最近は自給目標など忘れたかのように、海外穀物を買いまくっている。2011/12-2012/13年の輸入量は、2008/09-2009/10年に比べて、小麦で約3倍、トウモロコシで3.7倍に増え、高級品しか輸入していなかった米に至っては6.5倍にも増えている。米は、今や小差でナイジェリアに次ぐ世界第二の輸入国となった。

 ダントツの穀物輸入国である日本には及びもつかないが、中国は間違いなく世界穀物市場の構造変化を牽引し始めた。日本の伊藤忠を含む世界の穀物メジャーも、次々と中国ビジネスの強化に乗り出している。中国の穀物自給が昔話になる日も近いように思われる。それが世界食料安全保障に与える影響は計り知れない。

 関連ニュース
 China on a cereal buying spree ,FT.com.12.13
 Chinese  cereal buying spree shakes up grains,Financial Times,12.12.14,p.22