農業情報研究所農業・農村・食料アジア・太平洋地域ニュース:2013年10月14日

韓国 急速に進む都市生活者の帰農・帰村 日本でも進むこの流れ、効率化農政・TPPが止めてはならない

 韓国で農業・農村生活の見直しが急速に進んでいるようだ。

 14日に議会に提出された「統計コリア」のドキュメントによると、農業に従事するために地方に移住した都市家庭の数が記録的に増えている。このような家庭の数は2011年には1万503だったが2012年末には1万1220に達した。2年続きの1万突破である。

 都市で退職した50歳代後半の夫婦で構成される都市家庭が都会を去り、人生後半の新たな過ごし方として農業を選ぶ。それが韓国の一般的社会現象となった。近年、こういう生活の仕方を選ぶ比較的若い世代が増えてきた。こういう家庭の人口は、2001年の880から2008年には2218、2010年には4067と、着実に増えたという。

 2012年、その大部分は南東部の慶尚南道か、南西部の全羅南道に移住したということだ。

 No. of urban households turning to farming hits record in 2012,Yonhap(聯合ニュース),13.10.14 

 日本でも若者の農業・農村離れが言われて久しく、「国民に食料を安定的に供給しつつ、美しく豊かな自然や国土を守り、日 本の伝統文化を育んできた我が国発展の礎である」農業と農村は、「農業者の高齢化(平均 66 歳)、 農業所得の減少(20 年間で半減)、耕作放棄地の増大、過疎化が進展するなかで」その「再生は待ったなしの状況である」から、「農地集積を進め」、「新規就農者を倍増し、・・・家族経営・集落営農・企業等の多様な担 い手が共存する構造を創る」を作るのだそうである(自由民主党、農業・農村所得倍増目標10カ年戦略― 政策総動員と現場の力で強い農山村づくり ―より。

 しかし、今年はわが国でも、各地から記録的新規就農の報告が相次いでいる(日本農業:各地の動き:新聞報道から新規就農・帰農)。どうやら、韓国同様、農業・農村生活 を見直す動きが着実に広がっているようだ。日本の農業・農村も、まだ決して捨てたものではない。また決して捨ててはならない。今一番怖いのは、農地取得で企業を優遇することになるかもしれない(「農地集積」のための)「農地中間管理機構」の介入などで (例えば⇒地域主体の農地利用調整守れ 農委組織排除は遺憾 全国農業新聞 13.9.27)、折角のこういう「社会現象」の芽が摘まれてしまうことだ。そして、TPPは、こういう芽を間違いなく摘んでしまうだろう。

 増えたきた新規就農者は、農業法人雇用者、農家出身で他産業に従事した後に農家を継ぐ人、自ら農地を取得して就農する人、農家出身で高校・大学を卒業後に就農する人となど多様である。彼らが就く農業の形も多様であり、決して外国の巨大規模経営に匹敵する超効率的農業だけではない。政策は、こういう多様な農業の芽を、摘むのではなく、育て上げることに注力せねばならない。