農業情報研究所農業・農村・食料アジア・太平洋地域ニュース:2014年2月26日

生産性が低いタイ米農民はアセアンで最も貧しい とはいえ、その生産費を日本と比較すると

 タイ商工会議所大学の研究者によると、タイの米農民はアセアン諸国の米農民の中で最も貧しいそうである。

 10アール当たり収量はベトナム(年3作)が560キロ、ミャンマー(年2作)が260キロに対して、タイ(年2作)が281キロで、タイはベトナムの半分ほどでしかない。タイ米農民のトン当たり生産コストは9,763バーツ=約29,000円で、ベトナム(4070バーツ=約12,200円)の2.4倍、ミャンマー(7121バーツ=約21,400円)の1.37倍にもなる。この生産性の低さのために、過去3年の市場価格を大きく上まわる価格での政府受入れにもかかわらず、米農民のトン当たり所得はベトナムの3,180バーツ(約9,500円)、ミャンマーの3,484バーツ(約10,450円)に対して1555バーツ(約4,700円)にしかならない。

 研究者はタイ米農民を貧しさから救い出すためには、生産性を引き上げ、労賃・エネルギー・水に関連したい生産コストを引き下げ、高米価を保証するための政府の市場介入をやめねばならない、補助金を通して生産コストを40%引き下げ、農民所得を引き上げるべきだという。

 Rice farmers poorest in Asean,Bangkok Post,14.2.26

 ここ取り上げたいのはこうした議論ではなく、筆者には初見のこれら3ヵ国と日本の生産コストの違いである。安倍政権は、TPP妥結を睨んだその農政改革を通して、今後10年間で日本の米の生産コストを現状より4割低い60キロ9,600に引き下げると言う。60キロ9,600円はトン16万円ということだ。アセアン3ヵ国で最も高いタイの5.5倍、最も低いベトナムの13倍である。攻めの農業、攻めの米政策を称揚する人は、この数字をしっかり頭に入れておいてもらいたい。言いたいのはそれだけだ。