農業情報研究所農業・農村・食料アジア・太平洋地域ニュース:2014421

中国 深刻な土壌汚染を公に認める 食品安全・食料安全保障・住民の健康を脅かす

  中国政府が「国家機密」に指定した土壌汚染状況が、17日発表の環境保護部と土地及び資源部の共同報告によって明らかにされた。

 報告は2005年4月から2013年12月まで行われた香港・マカオ・台湾を除く全国630㎢の土地のサーベイに基づくもので、全国農地のほぼ5分の1、19.4%の農地土壌が汚染されている。人にとって危険なレベルのカドミウム、ニッケル、鉛、水銀などが含まれる農地土壌汚染は、米の主産地である揚子江・珠江デルタで特に深刻だという。

 報告によれば、汚染は長年にわたる複雑な要因が引き起こしたものだが、「主要な汚染源は人間の工業・農業活動だ」。

 工業廃棄物汚染は工場・鉱山周辺の土地を汚染し、車は主要高速道沿いの大気汚染を引き起こしている。そして、汚染された水による灌漑、肥料と農薬の不適切な使用、畜産の発展は農地汚染を引き起こしている。

 中国科学院の地理学及び自然資源研究所のChen Tongbin研究員は、報告は国の経済発展のパターンと環境保護システムに対する”大音声のアラーム”を鳴らすと言っているそうである。

 彼によれば、土壌汚染は大気・水汚染に比べて防止が難しく、修復にも一層長い時間と多くの財源が必要になる。作物の品質低下と量の減少が人々の健康を脅かすだけでなく、汚染土の上で暮らす人々は汚染物質を吸い込むことで、あるいは汚染物と肌で接触することで、健康を脅かされる。植物や微生物の正常な成長を妨げ、栄養分を蓄える土壌の機能を損う一方、これら汚染物質は地下に浸透、飲料水源を汚染する恐れもある。

 調査された土地の82.8%は非有機物質に汚染されており、カドミウム、ニッケル、ヒ素がトップ3汚染物質だった。1986〜1990年の調査結果に比べると、特に非有機物質の増加が大きい。例えばカドミウム汚染レベルは、南西部と沿岸部で50%、その他地域で10%から40%増えている。

 南部が北部より重度の土壌汚染を被っている。汚染は揚子江デルタ、珠江デルタ、重金属工業が集まる北東部の三大工業地帯で深刻、南西部や中部は高レベルの重金属汚染が報告されている。過去数年、中國全土で多くの重金属汚染事故が報告されてきた。昨年5月には、メディアは広州市の米から大量のカドミウムが検出されたと報告している。汚染米の大部分は、中部湖南省から来たものだったという。

 Xinhua Insight: China alerted by serious soil pollution, vows better protection,xinhua,14.4.18
 
China admits widespread soil pollution,FT.com,14.4.18

 それにしても、どうして「国家機密」が解かれたのか。大気汚染、水汚染の健康との関連は今や誰の目に明らか、政府の汚染防止への取組に対する国民の不満が爆発している。土壌汚染にもまじめに取り組まなければ、いずれ大気汚染、水汚染の二の舞になる。国産米の安全性をめぐる不安が呼び起こす国産米離れは食料安全保障も脅かす。政府は土壌汚染に真剣に取り組みます。機密解除は国民にそういうメッセージを送るものなのだろう。しかし、この取組は大気汚染・水汚染への取組以上に難しい。