EU農業団体、ヨーロッパの猛暑・干ばつ・森林火災被害評価を発表

農業情報研究所(WAPIC)

03.10.11

 10月10日、EUの農業者団体委員会・農業協同組合委員会(COPA−COGECA)が今年の猛暑と干ばつ、森林火災によるヨーロッパの被害状況を関する研究結果を発表した(ACCORDING TO COPA-COGECA DROUGHT AND FOREST FIRES GENERATE LOSSES OF 13 BILLION EURO)。損害額は全体で130億ユーロ(約1兆5千億円)にのぼるという。最も影響が大きかったのはイタリア、ドイツ、オーストリア、スペイン、フランス、ポルトガルで、干ばつの猛暑が大きな社会・経済・環境上の被害をもたらした。EU加盟候補国の農業も、とくに干ばつ被害に見舞われ、収穫の多くが危機に瀕している。

 被害が大きい部門は草飼料供給、耕種、粗放的養畜、集約畜産(主として養鶏・鶏卵)、林業の諸部門で、ジャガイモ、ワイン部門への影響も大きかった。

 とくに飼料不足は深刻で、その程度はドイツ・オーストリア・スペインで30%、イタリアで40%、フランスでは60%になるという。飼料ストック再建の費用は15億ユーロ(約1,800億円)の見積もられる。

 穀物収穫量は約1億8千600万トンで、前年より2千400万トン、10%(収穫面積減少:2.7%、収量減少:8.6%)少ない。最も被害が大きい穀物は、小麦とトウモロコシである。小麦生産は前年より11%減り、9,160トン、トウモロコシ生産は21%減で3千250万トンとなる。EUの主要穀物生産国で最大の影響を受けたのはドイツ、イタリア、フランスだが、ポルトガルのような他の国の生産も大きく減少した。EUレベルでの軟質小麦の損失の4分の3はフランスでの損失である。トウモロコシの損失の55%はフランスでの損失だが、イタリアの損失も3分の1を占める。

 [別のフランス穀物公社(ONIC)の最新予想(10月8日発表)では、フランスの小麦生産は、前年に比べて収穫面積の30万ha(6%)の減少、単位面積当たり収量の15%の減少により、前年を約20%下回る。また、フランスのトウモロコシ生産は前年を32%下回る]

 穀物生産の大幅減少にもかかわらず、義務的輸入の600万トン、利用可能な在庫の1,000万トンを加えると、域内総需要の1億9千万トンを満たし、伝統的輸入国への輸出も可能である。

 家畜部門では、飼料用の草の欠乏と予想される配合飼料価格の上昇のために、農民は主として冬季に重大な困難を迎える。フランスだけでも、牛肉部門の損害は15億ユーロ(1,800億円)、一頭当たり200ユーロ(2万3千500円)になると予想される。飼料購入のために必要となる追加費用は、1経営当たり3万ユーロ(350万円)と見積もられる。

 ジャガイモ収穫面積は9年来で最低で、昨年を4%下回り、生産量は6%減る。損害はスペインで30%、ドイツで25%、オランダとベルギーで20%、フランスで12%と見積もられる。直径は小さく、加工産業への供給に問題が生じると予想される。

 ワイン生産は3年続きの減少となる。2000年の1億8千万(ヘクトリットル)から、2001年1億6千400万、2002年1億5千900万と減ってきたが、今年は1億5千300万となる。最近5年間の平均(1億7千200万)と比べると11%の減少である。最大の減少を記録するのは、イタリア:18%、フランス:17%、ドイツ・ルクセンブルグ:15%、オーストリア:11%である。

 この状況は農協にも影響を与える。生産資材価格は上昇しており、供給不足とサイズ・品質のバラツキのために注文に応じられず、売上・市場シェアの低下につながる恐れがあるという。

 森林火災については、およそ64万7千haが破壊された。この数字は、ポルトガルで39万ha、スペインで12万7千haになる。COPAとCOGECAの会長は、再植林に向けてのEUの協調行動を定める必要があると言い、欧州委員会に対して必要な資金を利用できるようにすること、各国が既存の農村振興計画に基づく資金の再配分ができるようにすることを要請している。また、適切な資金を伴なうEUレベルでの森林火災防止政策の採択も必要だとしている。

 これらの自然災害で最大の被害を蒙った国々(フランス、イタリア、ドイツ、スペイン、ポルトガル、オーストリア、ハンガリー、エストニア、スロバキア)の現時点での被害総額は131億ユーロにのぼると推計される。