雨続きのイギリス・デンマーク 穀物収穫が危機的状態に

農業情報研究所(WAPIC)

04.8.31

 昨年の猛暑と打って変わり、今年のイギリスや北欧の夏は荒天続きだ。イギリス、デンマークでは水浸しの小麦畑にコンバインが入れず、穀物農家が音をあげている。

 30日付のコペンハーゲン・ポスと紙が伝えるところでは(Soggy weather threatens grain harvest,The Copenhagen Post,8.30)、国の大部分で雨に次ぐ雨、今年の穀物収穫が脅かされている。畑が水浸しで、多くの農民がコンバインが泥に埋まってしまうと言っている。南ユトランドでは穀粒が発芽をし始めているが、天候回復の予報はまったくない。デンマーク最大の作物は冬小麦だ。農業日刊紙・Landbrugsavisenが伝えるところでは、北ユトランドの冬小麦の収穫は完了に近いが、東ユトランドとヒューンでは約30%、南ユトランド・西ユトランド・シーランドでも半分程度の収穫が終わったにとどまる。

 イギリスの穀物農家はもっと絶望的だ。28日付のガーディアン紙の報道によると(Farmers facing ruin ready to abandon cereals for grass,The Guardian,8.28)、荒天のために小麦畑が水浸し、01年の口蹄疫以上の損害も予想される。農民は1エーカー(0.4f)当たり100ポンド(約2万円)の損害を予想する一方、専門家は全体の損害は10億ポンド(約2千億円)にものぼると推定する。

 ナショナル・ファーマーズ・ユニオン(NFU)の相談員は、播種の準備をすべきときに、なお小麦の3分の1が収穫されたにすぎない、9月の収穫が大きく進まないかぎり、農民は厳しい財政問題に直面、一部は破産に追い込まれると言っている。

 イースト・ヨークシャーで30年間農業をしてきたハスキン卿は、無価値となった作物のために利用できる補償はないから、口蹄疫のときの家畜農民以上の最悪の問題に直面する可能性があると言う。01年の口蹄疫勃発では、600万の家畜が屠畜され、納税者に30億ポンドの負担を課した。彼によると、今年の収穫は農業生活で記憶にない最悪のもの、土地の条件は1845年のアイルランドのジャガイモ危機のときに似ている。だが、政府は天候異変による補償はまったく考えていない。

 北部農民は借金を膨らまし、コンバインは畑に入れず、僅かばかりの収穫を市場に出しても価格は底値、一部農民はそれよりも畑を放棄するほうが安上がりだと言う。ハスキン卿は、来年1月から導入されるEU共通農業政策(CAP)の「デカップル」補助金を目当てに、農民が穀物生産を棄てることを考えると予想する。一部の畑は「休耕」で生産から引き揚げられ、他の一部は一層多くの家畜を飼養するための草地に当てられようと言う。

 しかし、環境食料農村省(DEFRA)は未だ様子見をしている。