フランスで加速する都市民の農村移住 環境保全・農村整備の難題も

農業情報研究所(WAPIC)

06.1.19

 フランス人の農村移住の動きが加速している。1月17日に発表された国立統計経済研究所(INSEE)の今年1月現在での調査結果によると、フランスの総人口は6,290万人で、2005年に367,600人増加したが、最も増加が著しいのは、都市民の定住がますます増えている都市周辺の農村地域だという。都会の住み難さが、ますます多くのフランス人を農村に惹きつけているようだ。

 増加の大部分は南部・西部・大都市周辺で起きており、新住民が最も多いのはラングドック・ルション、ミディ・ピレネー、コルシカ、アキテーヌの諸地域だ。アルザス、ローヌ・アルプ、プロバンス・アルプ・コートダジュール、ペイ・ド・ラ・ロワール・エ・ブルターニュでも移入が移出を上回るとともに、自然増が見られる。ただし、過疎化が著しい中央山塊のオーヴェルニュやリムーザンではなお減少が続いている。

 フランス人口の半分は人口1万人以下の町に住む。その人口は1999年以来、ほとんど倍増した。1990年から99年までの年平均増加率は0.5%だったが、1999年から2004-05年の間の年平均増加率は0.9%に高まった。この間、最も人口増加が激しいのは人口2000人以下の市町村で、500人以下の市町村では3倍に増えた。人口増加地域は、ますます都市から遠いところに広がっている。最も人口増加が多かったのは、1990年から99年には都市地域から15kmの市町村だったが、以後は25km圏の市町村となった。

 INSEE Communiqués de presse
 地図:http://www.insee.fr/fr/ffc/docs_ffc/carte%20ip%201058%20.pdf

 過疎化に悩む農村地域市町村にとって、これは歓迎すべきことかもしれない。しかし、フランスの国土整備・農村開発に新たな難題も突きつけている。

 昨年4月に発表されたフランス環境研究所(IFEN)の1990年から2000年まで土地利用の変化に関する研究報告は、農村地域小市町村におけるこのような現象がもたらす農村景観の後退が自然災害のリスクを重大化し、自然資源を毀損する要因となっていること、またに特に河川や海岸沿いの農地を犠牲にした都市的買収地が拡大している(+4.8%)ことを指摘した。それは、このような土地の”人工化”が、水汚染の拡大、生物多様性喪失の要因となり、また人々をますます自然災害のリスクに曝すことにもなり得ると警告する。

 http://www.ifen.fr/publications/DE/PDF/de101.pdf

 これら小規模市町村では、地価が吊上がる一方、ますます増加する人口ーその多くは都市への通勤者だーの様々な社会的サービスや交通・輸送需要の増大にも応えねばならない。これは財政力の乏しいこれら市町村の手に負えない難題となっている。

 Les zones rurales situées autour des villes attirent de plus en plus d'habitants,Le Monde,1.17
 http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0,36-731531,0.html

 わが国でも、団塊世代の引退に伴う農村移住の増加が取り沙汰されている。歓迎するだけでなく、それが引き起こす問題にも心しておく必要があるように思われる。