高コスト・低価格にうんざりの英国農民 ただ同然のロシアの広大な農地に新天地

農業情報研究所(WAPIC)

07.5.28

  お役所風繁文縟礼、作物価格低下、生き残りのための日々の苦闘にうんざりしたスコットランド農民のグループが今日、新たな機会を求めてロシアに旅立つ。ロシア政府は数ヵ月前、外国人が土地を賃借、農場を設立することを認めた。この法改正後最初の英国農民代表団が、緑のパスチャーを求め、モスクワ南東400マイルのペンザ(州)に飛ぶ。そこには、およそ100万エーカーの肥沃な土地が、地域農民が機械も肥料も種も買うカネがないために投資を求めて遊んでいる。英国・オブザーバー(ガーディアン)紙が伝えた。

 Scottish farmers eye new pastures in Russia,Observer,5.27

 今年初め、ペンザ州知事率いる代表団が、英国農民誘致のためにノッチンガムとエジンバラで一連のセミナーを開いた。期待していた20人余りを上回る100人以上の英国農民が関心を示した。高いコスト、低価格に苦悩する彼らには、ウクライナからロシア中央部にかけて広がる養分に富む遊休耕地は大変な魅力だった。

 ソ連邦解体後の農業衰退でロシアは大量の食料を輸入に頼っているが、外国人の農業参入で遊休地の利用が進めばその多くを国内で生産できる。そのために外国企業の誘致に乗り出している。ロシアのオファーを受け入れた最初の企業の一つ・ノッチンガムのハートランド・ファームによると、現在耕作可能地の47%が利用されているにすぎない。1万2000fを経営する同ファームは農場創設支援のほか、法務面での援助も受けた。

 その所有者・ロバート・モンク氏は、「英国農民は、嵩む経費、最低限の報酬、保健・安全規制のために利潤は減るばかりで、仕事はきつくなる一方だ。ロシアにはただ同然で利用できる広大な美しい農地が用意されている」と言う。

 ヨーロッパ最大規模を誇る英国企業農業さえも価格低下には音を上げ、ロシアの広大な肥沃な土地に新天地を求めている。日本では、オーストラリアや、将来は米国やEUとの経済連携協定によってどれほど価格が低下しようが、遊休農地利用を促す税制改正や企業の農業参入を促す農地制度改革で、農業の崩壊や食料自給率のさらなる低下も免れることができるという。どこの星の話なのだろうか。