バオ燃料ブームによる価格高騰で、EU乳製品輸出補助金がゼロに

農業情報研究所(WAPIC)

07.6.19

  EUがすべての乳製品の輸出払い戻し金(いわゆる輸出補助金)をゼロと設定することを決めた。すべての乳製品輸出が輸出補助金をまったく受け取らないのは、輸出補助金導入以来初めてのことだ。

 これは、一部は2003年CAP改革の結果だが、主に域内市場と世界市場の異例の市場条件ー価格高騰ーのためという。2003年CAP改革のスタート時、脱脂粉乳、全粉乳、バター、チーズの100kgあたり輸出補助金は、それぞれ57€、98€、178€、105€だった。ところが、現在の乳製品域内価格は改革前よりも高い。脱脂粉乳価格は介入レベルの2倍、バターの価格も介入レベルを30%上回る。

 世界市場でも同様の傾向が見られ、粉乳価格は400米ドル/100kgを超え、チーズ価格も400米ドル/100kgに近づいている。バター価格も記録的に高く、上昇している。

 European Commission:All exports refunds for dairy products set at zero,07.6.15
 http://ec.europa.eu/agriculture/newsroom/en/259.htm

 このような価格急騰の主因は、バイオ燃料用穀類需要の増加による飼料穀類価格の高騰と考えることができる(バイオ燃料急拡大で貧困国の食料輸入支出が急増 FAO最新食料見通し,07.6.8)。バイオ燃料ブームは、典型的な貿易歪曲的補助金と非難され、現在のWTO貿易交渉でも全廃が強く要求されているEUの輸出補助金の支払停止までもたらした。しかし、これは輸出補助による貿易歪曲の改善と歓迎できるような話ではない。貧しい食料輸入国の食料輸入支出は、先進国も対処し難い価格高騰で膨らむばかりだ。