欧州議会議員 スーパーの悪影響の全欧的調査を要請 日本のスーパーは中国餃子で自滅?

農業情報研究所(WAPIC)

08.2.29

  欧州議会(閣僚理事会と共に立法機関の一翼を担うEU機関)が28日、スーパーマーケットの小規模ビジネス、商品納入業者、労働者への影響調査を欧州委員会に要請し、また小売業者が”その支配力を濫用している”ことを示唆する書面の宣言に439名(全体の56%)の議員が署名したことを明らかにした。

 MEPS put supermarkets under spotlight,08.2・28
 http://www.europarl.europa.eu/news/public/story_page/049-22162-168-06-25-909-20080225STO22149-2008-16-06-2008/default_en.htm

 その発表は次のように述べる。

 我々の大部分は、週に一回、スーパーマーケット[以下、スーパーと表記]で買い物をする。我々がスーパーに行くのは、便利で、表示値段が安く、一度に買い物をできるからだ。これは好ましい側面であるが、スーパーの規模と購買力のめぐる懸念も強まっている。

 ヨーロッパ中で、大規模スーパーが引きつける客が増えているのは明らかだ。2005年の数字によると、フランスのカルフール、ドイツのメトログループ、イギリスのテスコ、ドイツのレーベが西・中央・東ヨーロッパで最大の販売シェアを持つ。ドイツ、フランス、アイルランド、スウェーデンでは、上位5つの小売業者が食料品雑貨販売で70%ものシェアを持つ。

 宣言署名者は、スーパーが少数の非常に目立つ品に安い値段を付け、調理済み食品など、あまり目立たない品目には高い値段を付けていると言う。

 宣言*は次のように言っていということだ。

 ・EUの小売業は、ますます少数のスーパーチェーンに支配されるようになっている。

 ・スーパーは堅固な関所となり、農家やその他の商品供給者はここを通らなければEU消費者にアクセスできなくなっている。

 ・供給者に払う価格を引き下げを強要するために大規模スーパーがその購買力を濫用しているという証拠がヨーロッパ中にある。

 ・このような購買力は、労働条件と環境に悪影響を与えている。

 そして、次のことを要求する。

 ・欧州委員会の競争政策当局は、[この小売業の]集中の小規模ビジネス、供給者、労働者、買い物客への影響を調査すること、

 ・あり得る購買力濫用のアセスメント、

 ・立法の可能性も含めた消費者・労働者・生産者保護措置。

 宣言を提案したポーランド選出一議員は、供給者に払われる価格と消費者が支払う価格の大きな違いを問題にする。また、大規模スーパーが大規模農場を必要とすることから、農場がますます大規模な少数の企業的農場に吸収され、その多くが地域の労働者を省き、低賃金の移民労働者を使用するようになることも問題にしている。

 イギリス選出の一議員は、スーパーでの買い物の環境影響を恐れている。規模が大きく、持続不能な慣行に依存することは、輸送のための化石燃料、肥料、多量の包装材に依存することを意味すると言う。

 ハンガリア選出の社会党議員は、ハンガリーでの西欧スーパーの不公正な慣行は新規加盟国の法律の軽視のためだと思ってきたが、西欧諸国も同じ問題に直面していることが分かった、このような活動をヨーロッパ・レベルで規制する必要があると言う。

 宣言は、スーパー現象は食品に限られない、衣料品、ホームエンターテインメント、医薬品、銀行業にも急速に進出しつつあると指摘する。

 *http://www.europarl.europa.eu/sides/getDoc.do?pubRef=-//EP//NONSGML+WDECL+P6-DCL-2007-0088+0+DOC+PDF+V0//EN&language=EN 


 日本では、多くの生協までがスーパー化している。その調査要請などを行う政治家などどこにもいないようだ。スーパーや生協のお陰で、国民は、農水省の検査をパスした安全な製造元で製造した安価な中国製冷凍餃子を安心して食べられるからだろうか。ただ、これも雲行きが怪しくなってきた。

 中国質検総局の魏伝忠副局長は28日の記者会見で、メタミドホスが「第三国から不法に購入して日本に持ち込まれた可能性も排除できない」と語ったそうである(東京新聞 29日長官 第3面)。この伝でいくと、生鮮食品でさえ、もし農薬が残留していれば、中国ではなく、日本で誰かが振りかけた「可能性も排除できない」ということにもなりかねない。

 これでは、安心して食べられる大規模流通食品などあり得ない。副局長発言で、日本人の中国産離れはますます加熱するだろう。中国産となれば、生協も含めたスーパーは扱いを一切やめるしかなくなる。中国は自ら墓穴を掘った。同時に、安価な商品調達先を失ったスーパーの市場支配力もガタ落ちになるだろう。スーパーとの闘い、日本ではスーパーの自滅となるのだろうか。