EU 不況による価格急落で乳製品輸出補助金支払いを再開 

農業情報研究所

09.1.28

  欧州委員会が2007年7月以来停止していた酪農製品への輸出払い戻し金(いわゆる輸出補助金)支払いの再開を決めた。ただし、WTOが許容した現在の輸出補助金上限は遵守、措置は市場条件が命じるかぎりでのみ実施するという。

 これは、生産者価格の最近の急落で引き起こされたEU乳製品市場の深刻な状況に対応するための決定だ。脱脂粉乳については、最大5,612トンまでの申請に対してトン当たり200€を支払う。バターについては2,299トンを上限にトン当たり500€を支払うという。

  Agriculture and Rural Development : EU reintroduces export refunds for dairy products,European Commission,1.27
  http://ec.europa.eu/agriculture/newsroom/en/322.htm

 金融危機に伴う不況は、消費者をより安価な乳製品に走らせることで欧州酪農業界に深刻な危機をもたらしている。例えばアイルランド。スーパーの安価なプライベートブランド品に切り替える消費者が増えたために、今や消費されるミルクの20%が輸入品になっている。大部分がスーパーのプライベートブランド品になっているイギリス よりはましだが、販売されるミルクの3分の1はスーパーのプライベートブランド品になっているという。

 20pc of all milk now imported in price squeeze,Irish Independent,1.28
 http://www.independent.ie/national-news/20pc-of-all-milk-now-imported-in-price-squeeze-1616841.html

 EUにとってはやむにやまれぬ決定だろうが、オーストラリア政府は早速、この決定を取り消すように要請する書簡を欧州委宛てに送った。欧州委の決定は世界的な乳製品価格の下落を引き起こし、主要生産国における補助金の導入につながるという。EUの輸出補助金廃止で輸出するまでに成長したインド乳業も、EUからの輸入品の洪水の再来を恐れる。WTO農業交渉への影響も避けられそうにない。

 Australian Government urges rethink on EU dairy subsidies,ABC Rural News,1.28
  http://www.abc.net.au/rural/news/content/200901/s2475941.htm
 EU’s subsidy move may hurt Indian dairy industry,Hindu Business,1.28
 http://www.thehindubusinessline.com/2009/01/28/stories/2009012850451600.htm