肉摂取を減らせば生物多様性・人間の健康・持続可能な農業に便益ーオランダの研究

 農業情報研究所(WAPIC)

06.4.28

  EUの欧州委員会によると、オランダの新たな研究が、肉を食べるのを減らすと生物多様性・人間の健康・持続可能な農業を含む環境に便益があると指摘している。一層持続可能な蛋白質代替品の研究において、肉の摂取を減らすいくつかの新たな理由を提供するために、オランダの三つの大学の研究者が協同作業を行った。彼らは、この”蛋白質移行”と呼ばれるものが、持続可能なエネルギー生産・水利用から生物多様性・人間の健康・動物福祉にまで至るあらゆることにプラスの影響を与えることを示唆しているという。

 Research: A Dutch study suggests eating less meat has benefits for the environment,4.27

 欧州委員会によれば、研究は次のように指摘し、また要請する。

 動物蛋白質1kgを生産するために、動物の種類により異なる3kgから10kgの植物蛋白質が必要になる。この肉1kgの生産には最大15m³の水が必要で、例えば羊肉1kgの生産には10m³の水が必要になる。しかし、穀物ではこれは最大3m³で済む。

 1950年から2000年の間に、世界の人口は27億人から67億人にほぼ倍増したが、肉生産は5倍、年に450億kgから2330億kgに増えた。国連食糧農業機関(FAO)は、2050年の世界人口は90億人になり、食肉生産は年に4500億kgになると予想している。

 共同研究の一つをなす’Proefetas’は、例えばエンドウ豆あるいは大豆に由来する植物蛋白質に基づく新規蛋白質食品(NPFs)の形での肉蛋白質代替品を増やすように要請している。「すべてがべジタリアンになるには及ばないが、生産の変化が、そして何よりもメンタリティーの変化が必要だ」と言う。さらに次のような指摘が続く。 

 「西洋諸国では肉代替品の人気が高まっているが、肉消費の高止まりが続いているのは確かだ」。肉消費が比較的少ない中国のような工業化途上の国でも、消費が急増している。「真の変化ー移行ーを実現するためには、このトレンドは世界規模で逆転されねばならない」。

 エネルギー生産については、作物バイオマスの能力増強が世界の増大する消費を持続可能な資源で満たすようことを助ける。肉摂取を減らすことは、畜産業が一層高品質で、病気のない生産に焦点を当てることを助ける。しかし、蛋白質移行がもたらす重要な結果は、植物摂取を増やし・肉摂取を減らすことにより人々の健康が改善され、とりわけ肥満に関連した病気の発生が減ることである。

 これはめぐって、持続可能なエネルギー生産、食品の品質と安全性、動物福祉、環境、貧困撲滅という国連ミレニアム開発目標に関連したEUの目標の達成を助ける。

 しかし、狂牛病さえも、既に肉の消費が自然発生的に低下しつつある西欧社会の変化を「加速」し、肉は「とっておきの宴会」のために、自由の身となり・野生に戻った家畜の「狩猟」によってしか手に入らなくなり、「人類の進化は、グローバル文明と称するものの拡大による地球の単一化に向かうのではなく、様々なものの対照を、新しいものさえ創出してきわだたせてゆき、多様性が支配する世界を再現する」ことになるのだろうかというレヴィ・ストロースの期待(クロード・レヴィ・ストロース(川田順造訳)「狂牛病の教訓―人類が抱える肉食という病理」『中央公論』2001年4月号)を裏切った。我々は研究者の要請に応えることができるのだろうか。

 それは、科学・技術の発展がもたらす便益の増加を進歩と受け止め、この流れを覆すことはできないと前提して、それがもたらす”リスク”に対応するために組織される”リスク社会”から抜け出すことと同じほどに難しい。

 狂牛病の例を見れば、このようなリスクは予測不能だし、十全な制御の術もないことは明らかだ。また、今や、現在のような生活スタイル・レベルを続けるかぎり、それを支えるために不可欠な地球資源が完全に使い尽くされてしまうこともはっきりしてきた。それにもかかわらず、人々は、牛肉を食べることをやめたり減らすことはまったく考えず、特定危険部位を食べなければ大丈夫だ、いやこの病気についてはよく分かっていないのだから全頭検査をしなければ安心はできないなどと、リスク社会のパラダイムに乗ったまま争っている。

 もし生き残ろうとするならば、研究者の要請に真剣に応えねばならない。

 なお、この研究は、オランダ農業・自然・食品品質省に提出されたもので、「持続可能な蛋白質の生産と消費:豚か、豆か」(Sustainable Protein Production and Consumption: Pigs or Peas?)と題する本として公刊されるという。

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狂牛病の欧州化、グローバル化,2001.4