FAO 価格高騰による食料難に警鐘 IRRIも、米価格高騰は当分続きそう

農業情報研究所(WAPIC)

08.4.12

 国連食糧農業機関(FAO)が4月11日、最新の”作物見通しと食料情勢”報告を発表した。目下の食料情勢は穀物をはじめとする基礎食料の価格高騰で特徴づけられる。この価格高騰で、とりわけ食料輸入途上国で、必要な食料を手に入れることができない人々が増え、社会が不安定化、方々で暴動さえ起きている。

 他方、2008年の世界穀物生産は2.6%増え、史上最高の21億6400万トンに達する見込みだ。これが実現すれば、現在の危機的情勢は和らぐ。ただし、この見通しは好天に助けられることが前提だ。悪天候で少しでも見通しが狂えば、危機はさらに深まる恐れがある。というのも、2007/08年の世界穀物期末在庫は、既に低レベルだった期初在庫より5%(2100万トン)減り、この25年間で最低の4050万トンにまで落ち込むからだ。これは世界の利用の18.8%[2.3ヵ月分]にすぎず、低レベルだった2006/07をさらに6%も下回る。

 http://www.fao.org/docrep/010/ai465e/ai465e00.htm

 世界の穀物・食料品価格の上昇は06年秋頃から始まり、07年半ば頃から一段と加速、もはや”暴騰”というしかない状態が続いている。

 報告によると、穀物国際価格は、需要の着実な増加と世界の在庫の枯渇を反映して、過去2ヵ月、急騰を続けている。米価格は、主要輸出国による新たな輸出規制で最も上昇している。小麦と米の今年3月末の価格は、1年前の倍にもなった。トウモロコシの上昇も著しい。

 値上がりしているのは穀物だけではない。乳製品は、輸出国からの供給不足、堅調な輸入需要、公的在庫の消尽で2006年末から輸出価格が急騰を続けてきた。FAO価格指数(1998-2000年=100)は07年11月に302に達した後に下落に転じたが、それでも今年3月の平均は276、2006年平均の倍のレベルだ。飼料価格高騰を反映して肉も値上がりしている。今年3月の平均は133、以前のピーク(2005年、121)を超えている。

 油の今年第一四半期の平均は269、前年同期よりも133ポイント高い。これは1年で98%(倍)の上昇を意味する。報告は、食料用のみならず、バイオ燃料原料としての植物油の需要の不断の増大で次第に供給不足となり、価格急騰につながっていると言う。

 このような穀物等の国際価格上昇に運賃上昇、石油価格上昇が加わり、世界最貧国の穀物輸入額は、2006/07に37%増えたのに続き、2007/08年にはさらに56%増える。アフリカの低所得食料不足国では、74%も増えると見込まれるという。

 輸入国、輸出国を問わず、多くの途上国は、輸出制限、食料補助金、輸入関税引き下げ、価格統制などの政策措置を導入、国際価格高騰の国内価格への影響を抑えようと懸命だ。それでも、最近数ヵ月、多くの途上国でパン、米、トウモロコシ製品、牛乳、油、大豆、その他の基礎食料品の価格が急上昇している。

 FAO Newsによると、先月、エジプト、カメルーン、コートジボワール、セネガル、ブルキナファソ、エチオピア、インドネシア、マダガスカル、フィリピン、ハイチで食料暴動が報告された。パキスタン、タイでは、田畑や倉庫からの食料略奪を防ぐために軍隊が動員された。

  各地の事例

  コートジボワール:08年3月の米価格は1年前の倍になった。

  セネガル:08年2月の小麦価格は1年前の倍、ソルガムの価格も56%高い。

  ナイジェリア:ある地域重要市場で、ソルガムとミレットの価格が5ヵ月で倍になった。

  ソマリア:北部地域の小麦粉価格が去年、ほとんど3倍に。

  スーダン:08年2月の首都の小麦価格が1年前に比べて90%上昇。

  ウガンダ:08年3月のトウモロコシ価格が07年9月に比べて65%上昇。

  エチオピア:08年3月のアジス・アベバのトウモロコシ価格が1年前の倍に、小麦は42%上昇。

  モザンビーク:首都・マプトの08年3月のトウモロコシ価格が1年前より43%高い。

  フィリピン:米価格が過去2ヵ月で50%上昇。

  スリランカ:08年3月の米価格が1年前の倍。

  バングラデシュ:08年3月の米価格が1年前より66%高い。 

  タジキスタン:08年2月のパンの価格が1年前の倍。

  アルメニア:小麦粉価格が1年で3分の1増。

  ハイチ:食料品価格が去年より50-100%高いという報告。

 FAOグローバル情報・早期警システムのアンリ・ジョセラン氏は、「食品価格上昇の最大の被害者は、総支出中の食品への支出の割合が豊かな人よりもはるかに高い貧しい人々だ。工業国の消費者の支出の10-20%が食品への支出だが、多くは食料純輸入国である途上国では60-80%にもなる」と言う。

 FAOは、農民を助けて各国の食料を増産するために、食品価格高騰の影響を受ける貧しい国への技術・政策支援を提供する”高騰食品価格イニシアチブ”(ISFP)を立ち上げた。ブルキナ・ファソ、モーリタニア、モザンビーク、セネガルで既に活動を始めているという。

 また、FAOは、すべての援助供与国や国際金融機関に対し、援助を増やすか、高価格で影響を受ける国での進行中の援助の再編を考えるように要請するという。このようなプロジェクトやプログラムの実施に必要な追加資金は12億ドルから17億ドルと試算される。これらの資金で貧しい農民への農業資機材を含む大きな支援を提供、来季の食料供給を増強することができるという。

 http://www.fao.org/newsroom/en/news/2008/1000826/index.html

 なお、フィリピンにベースを置く国際稲研究所(IRRI)も4月10日、米の生産が急増する需要に追いつかないから、米価格上昇は当分続きそうだとする記事をIRRIの雑誌:Rice Todayの最新号に掲載した。

 http://www.irri.org/media/press/press.asp?id=172

 IRRIによると、米価格高騰の背景には、@工業化と都市化で米を生産する土地と灌漑水が奪われていること、Aアジア、特にインドと中国の都市中産階層の間での肉や乳製品への嗜好の高まりが米生産用地の減少につながっていること、Bインドネシアやバングラデシュにおける洪水や、ベトナムと中国の最近の寒冷なの気象災害による生産の損害、Cインド、中国、ベトナム、エジプトなど主要生産国のよる輸出制限の導入などの要因がある。

 IRRIは、価格高騰を抑えるためには、米生産性を上昇させる研究によって需給不均衡を解消する必要があると言う。これは長期の取組を要する難題だ。