農業・開発専門家 アフリカ農民への種子援助の再考を要請
08.5.15
ネイチャー・ニュースによると、農業・開発専門家が、危機に瀕したアフリカ農民に種子を恵む”種子援助”は地域社会のニーズに合っていないと、それに代わる援助方法を要請している。この要請は、5月14日にオスロで開かれた国際会議で発せられたもので、5月1日付けの国際開発専門家による関連報告を引き継ぐものという。
International
seed aid "in need of rethink",Nature News,5.14
http://www.nature.com/news/2008/080514/full/news.2008.826.html
この報告の著者の一人、国際熱帯農業センターのアナリストであるルイーズ・スターリングは、貧しく、戦争で疲弊した国に決まりきったように与えられる種子の施しは、実際には農産物市場の回復を妨げる恐れがあると言う。この施しは、自給が可能になってからも長い間、農民が施しを受け続けるという結果をもたらす恐れがある。いまや、ブルンジは連続26シーズン、エチオピアも過去34シーズン、緊急種子援助を受けているという。
この報告によると、国際社会は、トウモロコシ(コーン)などの作物の種子援助に巨額の金を支払ってきた。アフリカの15ヵ国に与えられる種子援助は1974年に遡る。種子援助は直接食料援助に支払われる額の2〜3%を占めるだけだが、種子への累積支出額は巨額にのぼる。種子援助は、干ばつ、洪水、不作、社会不安の被害を受けた地域に与えられてきた。
スターリングによると、種子援助が始まったときには、食料を与えるよりも犠牲者の能力を向上させるということから、非常に革新的に見えたが、現実はそう簡単ではない。ほとんどの場合、問題は種子不足ではなく、農民に買う金がないこと、従って社会的ネットワークが崩壊していることだ。
彼女は、「我々が学んだ大きなことの一つは、食料生産が大きく落ち込む―例えばソルガムの収穫の95%が失われるような―ことはあっても、5%は残り、種子として利用するにばこれで十分だ」と説明する。
1997年のケニアの干ばつののち、収穫ほとんどなかったにもかかわらず、次のシーズンに撒かれた種子の85%は地方品種だった。1994年、民族紛争の結果として80万の命が奪われたルワンダのジェノサイドののちにも、巨大な量の種子が贈られたが、大部分は使用されなかったという。
わが国も種子援助を含む食料増産援助を行ってきたが、それで利益を得てきたのは誰だったのか、機械、肥料、農薬などの援助とともにその効果を再評価し、これら援助を再考すべきときかもしれない。