金融危機が農家を直撃 食料危機を悪化させる恐れ

農業情報研究所(WAPIC)

08.10.28

   世間の耳目が金融危機と景気動向に集まり、少なくとも日本では、つい最近まで耳目を集めた”食料危機”などすっかり忘れられたようだ。しかし、 金融危機の農業・食料生産への影響は、既に世界の処々に現れている。金融危機は世界の食料危機をさらに悪化させるだろう。

 27日付けのBloomberg.comが伝えるところによると、金融危機が農民の利益を圧迫、世界の収穫を減らし、途上国の食料危機を さらに悪化させる恐れがある。

 シカゴの農家アドバイス会社・アグリソースのダン・バース会長によると、来年の世界小麦生産は4.4%減ると予想される。トウモロコシ、大豆の収穫量も減りそうだ。収穫減少は、08年の記録から沈み込んだ農産商品価格を再び引き上げる。シカゴ商品取引所の先物相場は、09年末までに、小麦が16%、トウモロコシが15%、大豆が3%上がるだろう

 米国、アルゼンチンに次ぐ世界第三のトウモロコシ輸出国のブラジルでは、農家が肥料を買うためのローンが得られないために、生産が20%減る(全国トウモロコシ生産者協会副会長)。大恐慌以来最悪の金融危機で銀行やカーギル、ADMなどの穀物加工業者のリスク耐性が減り、借入コストが上昇、農家がローン獲得に苦闘している。カーギルとADMは、ブラジルの生産者への融資を停止した。加工業者は、通常、農家が必要とする融資額の半分を支払って将来の作物買い入れ代金の一部に替える。しかし、今は誰もそんなことをしなくなった(全国肥料商協会会長)。

 ロシアでは、農家への貸付利率が、過去数ヵ月に20%も上がった(ロシア穀物連盟会長、10月初めのインタビュー)。

 (米国)今年はベストの年になりそうだが、価格が予想される生産コストより上がらなければ、09年はすべて元の木阿弥に なる恐れがある(イリノイのトウモロコシと大豆の生産者)。

 シカゴ商品取引所の小麦・トウモロコシ・大豆の相場は今年のピーク時の半分近くにも落ち込んだが、モンサントのトウモロコシ種子は45%の値上がり、ディーゼル燃料の価格も51%上がった。地代も上がっている。

 Farm-Credit Squeeze May Cut Crops, Spur Food Crisis (Update1),Bloomberg.com,10.27
  http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601170&sid=aox4ZwDlWkvQ

  金融危機が対途上国食料・農業援助の減少につながることも確実だ(米国とEUは、アフリカの貧しい人々を3年間養うのに十分な金を銀行支援に注ぎ込む)。とりわけアフリカの食料危機は、ますます深刻化するばかりだろう。

  Do not forget the global food crisis,Monitor(Uganda),10.26
  http://www.monitor.co.ug/artman/publish/sun_business/Do_not_forget_the_global_food_crisis_73678.shtml

  Financial Meltdown Worsens Food Crisis,Washington Post,10.26
  http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/10/25/AR2008102502293.html?wpisrc=newsletter