西オーストラリア政府 中東諸国の農地投資を歓迎 激化する農地売込み合戦

農業情報研究所(WAPIC)

08.12.16

  西オーストラリア(WA)州のテリー・レドマン農相が将来の食料を確保するためにオーストラリア第一級の小麦ベルト農地を取得しようとする中東諸国の動きを歓迎している。

 ウエスト・オーストラリアン紙によると、WAでの作物・羊・酪農生産に最大で10億ドル(600億円ほど)の投資を考えている中東の二つのグループが、来年早々に州を訪れる。水の枯渇を恐れて小麦や大麦の生産削減を計画しているサウジアラビア(小麦自給の夢達成の砂漠国・サウジ 2016年まで小麦生産撤退 輸入国に)などがWAの農地の購入か長期借入を研究している。

 これに対し、レドマン農相は15日、中東は年に13億ドルにのぼるWAの重要輸出地域だ、国最大の小麦輸出州であるWAへの外国投資は、貿易拡大と産業への資金注入を通して利益をもたらすだろうと語った。「これは真剣に考え、実際歓迎する必要があると思う」、海外からの投資や企業の投資と伝統的家族農業のバランスを取ることは可能と信じるということだ。

 Minister backs Arab farm deals,West Australian,12.16
 http://www.thewest.com.au/default.aspx?MenuId=2&ContentID=113408

 しかし、これは農業者の間の激しい論争を呼ぶことになりそうだ。

 牧畜業者団体(Pastoralists and Graziers Association)会長は、都市不動産市場や資源部門が外国投資から大きな利益を享受しているのに、農業がこの利益に与ってはならないという理由はないと、農相の考えを支持する。

 しかし、ブルックトンの農民は、WA農業への大規模外国投資は伝統的家族農業の将来を脅かす、投資家は輸出市場が規制されていない国に小麦を直接供給できるから、WA生産者が国際市場へのアクセスを失う可能性があると恐れる。WA農産物の市場を開拓する代わりに外国に農地を売ろうという農業省には失望したと言う。

 農業省穀物産業開発部長によると、中東投資家による土地の購入または長期借入は、先月のサウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦での会合で議論された貿易促進策の一環をなす。彼は農場を売り払うつもりはなく、WAに投資を呼び込むのが狙いだ、「これらのガイはアルゼンチン、ブラジル、チリ、ニュージーランドに行ってしまう恐れがある」と言う。 


 食料輸入国による外国農地争奪だけではなく、外国投資家への農地売り込み合戦も激化している。それが受け入れ国とその農民に利益をもたらすのか、それともその将来を脅かすのか、世界で深刻な議論が始まっている。

 例えば900万小農民への投資による穀物増産計画に失敗、干ばつと飢餓に脅かされつづけるエチオピア。大規模商業的農業を育成すべく、サウジアラビアなどからの外国投資呼び込みに必死になっている。農業省は、国のほとんどすべての穀物を生産する地域の200万fの農地をこのような外国投資家のために用意する。しかし、ここで生産される食料はほとんどすべて外国に持ち出されるだろう。小農民は(恐らくは”派遣労働者”にも劣る立場の)雇われ農場労働者となって生計をつなぐことになるだろう。余りにリスキーだ。

 Ethiopia: Can Foreign-Owned Farms Solve Food Crisis?,allAfrica.com,12.13
 http://allafrica.com/stories/200812130008.html