2009年世界穀物生産は大幅減 国内食料品価格は高止まり―FAO最新見通し
09.2.13
国連食糧農業機関(FAO)が2月12日、世界の2009年作物生産見通しと食料をめぐる状況に関する最新報告を発表した。
主要生産国における作付面積の減少と天候要因による収量減少で、2009年の世界穀物生産は2008年に比べて大幅に減少する。しかし、2008年の増収のお陰で穀物需給は緩和する。
とはいえ、穀物国際価格の低下にもかかわらず、大部分の国の食料品価格は高止まりしており、ガザやアフリカ、アジアの一部貧困国では重大な食糧危機が続いている。
バイオ燃料についても言及、バイオ燃料生産のための穀物利用はさらに増加、1億400万トンに達すると見込む。
Crop Prospects and Food Situation-No1 February 2009
http://www.fao.org/docrep/011/ai480e/ai480e00.htm
穀物生産
ヨーロッパと米国の冬小麦は、一般的には生育条件に恵まれたが、作付面積は減少した。2008年同様に高い投入コストが続き、生産物価格が比較的高かった去年に比べて収益性の激減が見込まれるからだという*。
アフリカ南部のトウモロコシ生産は減少が見込まれる。
政府支援措置が導入された中国、インド、パキスタンなど一部アジア諸国では冬小麦の作付が増加した。しかし、中国では冬小麦面積の半分近くは干ばつの影響を受けており、インドも干ばつ気味だ。ただ、アジアの穀物生産見通しは、未だ作付けが始まっていない米次第で大きく変わる。
南米では、2008年の小麦生産はアルゼンチンの干ばつで半減したが、乾燥した天候はなお続いており、2009年の地域の穀物も減収となりそうだ。
穀物在庫
ただし、2008年の穀物生産最新見通しと2008/09年の利用の見通しからすると、2009/10年の世界穀物在庫は2002年以来最高の4億9600万トンに達すると見込まれる。2008年の平年以上の収穫のお陰で、低所得食料輸入国の穀物需給は緩和する。
価格
2008年後半からの国際価格の下落にもかかわらず、いくつかの途上国の国内食料品価格は高止まり、低所得層の食料購入に影響を及ぼしている。アフリカ南部や中米では主要食料の価格がなお上昇するか、下がっていない。
西アフリカ、東アフリカ諸国では、9-10月の収穫開始以来、価格は大きく下がったが、今年1月現在、なお1年前よりも高い。輸入米・小麦の価格は上昇さえしている。米と小麦の価格は、アフガニスタン、パキスタン、スリランカなどのアジア貧困国でも高止まりしたままになっている。
食糧危機
世界の32ヵ国で食糧危機が続いている。それに加え、最近のイスラエルとの紛争の結果、ガザ地域も非常に心配される状況になっている。
東アフリカでは、紛争や天候不順が重なり、1800万人が深刻な食糧危機に直面している。南部アフリカでも870万人が同様な状況にある。ケニア、ソマリア、ジンバブエでは、干ばつ、紛争、経済危機で、事態は非常に深刻だ。
バイオ燃料
2008/09販売年度(7-6月)についての見通しでは、バイオ燃料生産のための穀物利用はさらに増大、1億400万トンに達する。これは世界穀物生産の4.6%に相当、2007/08年に比べて22%の増加だ。
米国では、2007/08年より19%増加、9300万トン(うちトウモロコシが9100万トン)になる見通し。少し前にはトウモロコシのバイオ燃料用利用がもっと増えると予想されたが、最近数ヵ月の原油価格急落と経済減速で、この予想は引き下げられた。
*例えばEUでは、2008年農畜産物生産物価格は07年に比べて実質で2.7%上昇したが、農業生産手段購入価格は実質で11.6%も上昇した。肥料・土壌改良資材は60.6%も上昇、エネルギー・燃料価格、飼料価格もそれぞれ16.9、14.6%の上昇だった。
Eurostat:EU Agricultural
Prices in 2008
http://epp.eurostat.ec.europa.eu/cache/ITY_OFFPUB/KS-SF-09-010/EN/KS-SF-09-010-EN.PDF