農業情報研究所農業・農村・食料食糧問題ニュース:2010年10月11日

米欧の不作で粗粒穀物が供給不足に 米農務省予測が急変 シカゴ穀物等先物相場はストップ高

(10月10日掲載の「今日の話題」<トップページ>から転載)

  米国農務省(USDA)が10月8日、月例世界穀物需給報告で、世界が利用できる粗粒穀物の予想供給量を劇的に引き下げた。米国ではトウモロコシ収量が今までの予想よりも大きく減る。大麦が粗粒穀物生産の40%を占めるEUでは、その収穫面積と収量が減るために、今季の収穫量が15%減り、この10年来の最低レベルに落ちこむ。しかも、すべての供給が世界市場で利用できるわけではない。多くの国の在庫は、中国が典型例を示すように、国内利用と戦略的備蓄のためにのみ蓄えられている。同時に、米国とEUの粗粒穀物在庫は50%(3500万トン)近く減ると見込まれる。米国のトウモロコシ在庫は50%(2000万トン)ほど落ち込み、この14年で最低のになると見込まれる。EUの大麦在庫は70%も減ると見込まれる。 

 http://www.fas.usda.gov/grain/circular/2010/10-10/graintoc.asp

 筆者は早くから、現在の在庫は07-08年の世界食料危機時を大きく上回っているから食料不足は生じない、市場は過剰反応(投機)に走っているというFAOやUSDAの主張は説得力を欠くと言ってきた(USDAが世界穀物需給最新見通し 世界の小麦供給基盤は盤石か<8月13日>、「食料不安 日本も備え急務 穀物価格急騰」<日本農業新聞=万象点描、9月30日>)。USDAも、ようやくそれを認めたようだ。今蒔きつけが始まったばかりの南半球の収穫で北半球の供給不足が埋め合わされる可能性があると補足はするものの、市場はもう信じない。この日の発表を受け、先週末(8日)のシカゴ穀物・大豆先物相場は、軒並みストップ高となった。トウモロコシ、大麦が不足すれば、小麦や大豆の飼料用需要も増える。