農業情報研究所農業・農村・食料食糧問題ニュース:2010年10月23日

土壌劣化、工業化・都市化、環境保全、ランドラッシュが食料への権利を脅かす ドシュッテル国連特別報告官 

  10月21日、オリヴィエ・ドシュッテル「食料への権利に関する国連特別報告官」が国連総会に宛てて、食料への権利を尊重し・保護し・享受するために、慣習的土地保有制度の強化と土地保有に関する法律の増強、食料への権利を実現するための土地再配分、追い立てや土地への権利の剥奪・集中につながることがない開発モデルの優先などを国と国際社会に対して勧告する報告書を出した。報告書は、食料への権利を享受するためには土地へ のアクセスと土地保有の保証が不可欠だが、土地と三つのカテゴリーの土地利用者―先住民、小土地保有農民、そして牧畜民・遊牧民・漁民などの特別の集団―に対する圧力の増加で、これが脅かされているという。

 報告によると、農村人口の増加で、一人または一家族が耕作できる面積が、とりわけアジア、東アフリカ、アフリカ南部で劇的に減り、土地無し民も増加している。土壌の浸食・劣化、食料・エネルギー作物・換金作物を生産するための大規模プランテーションの政策的開発、京都議定書で認められたクリーン開発メカニズム(途上国での温室効果ガス排出削減によって先進国が追加排出権を獲得する)や「森林破壊及び劣化による排出削減」(REDD)計画が促す現地住民・先住民の追い立て、そして土地の工業的利用と都市化(鉱工業の利用のための農地取り上げ、外国投資誘致のための経済特区を作るための工業用地拡大、ダムや高速道路の建設など)で、人口増加による土地への圧力が増幅される。

 世界全体で見ると、浸食や土壌劣化で500万〜1000万ヘクタール、工業化・都市化で1950万ヘクタール、合わせてイタリアの総面積に等しい3000万ヘクタールの農用地が毎年失われているという。

 ドシュッテル氏によると、現在、土地への権利に対する攻撃で5億の小農民が飢えに苦しんでいる。農村人口の増加と工業化・都市化で小農民が耕す土地は年々減り、農民は乾燥した、あるいは山地の、あるいは灌漑なしの土壌に挑戦して追い返されている。さらに、食料やバイオ燃料原料を生産する大規模プランテーションを作るために、外国投資家は4500万ヘクタールもの土地の取得に関心を示している(ランドグラビングに関する先の世銀報告が示した面積である。参照:世銀 グローバル農地投資の調査結果を公表 ランドラッシュは重大な社会・環境リスクを生む恐れ,10.9.8)。これらのことは、生残を土地と水へのアクセスに依存している小農民、先住民、牧畜民、漁民に巨大な影響を及ぼすという。

 New Report: Access to Land and the Right to Food,srfood.org,10.10.21
 http://www.srfood.org/index.php/en/component/content/article/1-latest-news/984-access-to-land-and-the-right-to-food


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