農業情報研究所農業・農村・食料食糧問題ニュース:2011年2月4日

1月のFAO食料価格指数 史上最高に 自由貿易国家・韓国の食料インフレはOECD No2

  国連食糧農業機関(FAO)の今年1月の世界食料価格指数が史上最高を記録した。

 2月3日に発表された価格指数は過去に遡って修正されており(主として肉価格指数に対する調整を反映)、今年1月に発表された指数では昨年12月の指数が2008年6月の最高記録:213.5を超える214.7に達したとされていたが(2010年12月のFAO食料価格塩数 史上最高に)、これらの数字はそれぞれ223.1、224.1と修正された。従って、昨年12月の指数は、過去のピークを、わずかながらまだ下回っていたことになる。そして、この修正を経た後の今年1月の指数は231で、前月の224.1を大きく上回った。正真正銘、過去のピークを超えたことになる。この価格レベルは、FAOが食料価格計測を始めた1990年以来、名目でも実質でも最高ということだ。 

 FAOの専門家は、「新たな数字は世界食料価格の上昇圧力が和らいでいないことを示す。このような高価格は今後しばらく続きそうだ。・・・・・・いくつかの国が豊作で、一部基礎食料の国内価格が世界価格に比べて低く保たれているのが唯一の救い」と言う。

 穀物価格指数は12月より3%上がって245になり、2008年7月以来の最高だが、2008年4月のピークよりはなお11%低い。1月の上昇は小麦とトウモロコシの国際価格の継続的上昇を反映しているが、コメ価格は主要輸出国の収穫期に重なったことで僅かながら下がった。

 油価格指数は前月より5.6%上昇して2008年6月の記録的レベルに近い278に達した。これは、油糧種子の需給がますます締まっていることを反映している。

 乳製品価格指数は前月より6.2%上がり221となったが、2007年11月のピークよりは17%低い。南半球が生産減少季にあり、世界需要が堅調であることが価格を下支えしている。

 既に史上最高となっていた砂糖価格指数は前月を6.2%上回る420に達した。世界的供給不足が国際価格を吊り上げている。

 肉価格指数だけは安定している(166)。ドイツの養鶏飼料ダイオキシン汚染事件で消費者の信頼が落ちたヨーロッパで値下がりしているが、ブラジルと米国の輸出価格の多少の上昇がこれを相殺している。

 World food prices reach new historic peak,FAO,11.2.3
 http://www.fao.org/news/story/en/item/50519/icode/ 

 実際、世界中で食料インフレが起きている。チュニジアに始まり北アフリカ・中東全体に広がりつつある独裁政権打倒の動きは、食料・石油価格の高騰(と失業蔓延がもたらす生活苦)が引き金になっている。長期独裁への反撃が、どうして今始まったのか。それなしでは説明できない。

 食料を輸入に頼る多くの国も、いずれ同じ目に会うだろう。国内農業を犠牲に自由貿易協定を推進してきた韓国の食料インフレ率はOECD諸国中の第二位になった*。経済躍進もストップするだろう。

 S. Korea ranks No. 2 in OECD for food inflation: data,Yonhap,2.3
 http://english.yonhapnews.co.kr/business/2011/02/03/17/0502000000AEN20110203000900320F.HTML

 今はデフレの食料輸入大国日本も、国際価格高騰が続くかぎり、いずれ食料価格高騰、あるいは食料欠乏で行き詰る。世界食料市場がこの大荒れの時代に自由貿易の大海に漕ぎ出せば、間違いなく沈没する。

 *2010年12月、エストニアの12.2%に対し、韓国は10.6%(日本は1.0%)→http://stats.oecd.org/index.aspx?queryid=26659