農業情報研究所>農業・農村・食料>食糧問題>ニュース:2,011年月4日
FAO世界食料価格指数 2ヵ月連続で史上最高記録更新 今世紀前半は高値が続くとの予想も
2月のFAO世界食料価格指数が史上最高となった先月の230.9を上回る236にまで上がった。FAOは、2010年の需要増大と生産低迷を受け、今年の世界穀物在庫は、小麦と粗粒穀物(トウモロコシと大麦)の在庫減少で急減すると予想する。国際穀物価格は、昨年2月以来、少なくとも70%上昇した。予想外の原油価格高騰は、食料価格をさらに上昇させる恐れがあると言う。
価格指数はほとんどの品目で上がった。乳製品価格指数は1月の221.3から230に跳ね上がった。肉は166.2から169.5に上がった。肉価格の上昇は、肉消費が多い先進国で2007-08年以上の食料インフレにつながる恐れがある。調理油・油脂も上がり、穀物は244.8から253.8にジャンプ、2008年8月以来のレベルに達した。既に史上最高に達していた砂糖だけが、わずかに下がった。
FAO Food Price Index 価格はさらに上昇を続けそうだ。FAOによれば、2010-11年の世界穀物生産は22億4000万トンと予想され、これは前回予想(2010年12月)を1.1%下回る。穀物使用量はこれを上回る22億8000万トンと予想する。期末在庫予想も12月の5億2500万トンから4億7900万トンに大幅下修正だ。中国のトウモロコシ在庫の歴史的減少が響いた。小麦生産予想は前回の6億5300万トンから1000万トンだけ切り上げた。価格低下を予想する材料はない。 カナダ、オーストラリアの悪天候、ロシアの干ばつによる生産・供給の減少がもたらした食料価格高騰を一つのきっかけに生じた北アフリカ・中東の動乱は原油価格高騰につながった。原油価格高騰はバイオ燃料の競争力を増し、バイオ燃料生産のためのトウモロコシ消費の増大はトウモロコシ、そして小麦など他の穀物の価格の一層の上昇につながるだろう。それは、燃料や肥料の価格高騰を通じても、食料価格を一層つり上げる。食料価格は、近い将来も上がり続けるだろう。 原油価格の動向については確かなところは予測できないとしても、国際通貨基金(IMF)の研究者も、今日発表された論文で、歴史的なレベルにまで上がった世界食料価格は、「不可逆的な世界経済の構造変化」を反映する需要の増加のために高止まりすると予測する。 途上国における所得増加が肉や乳製品の需要増加を加速、これが家畜飼料向け穀物や放牧地の需要を増加させる。バイオ燃料用需要の増大や異常気象も食料需給を逼迫させる。高価格に対応した供給増加が期待できるが、それには長い時間がかかると言う。 Thomas Helbling and Shaun Roache,Rising Prices on
the Menu,Finance
and Development,March 2011.
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オーストラリア政府の気候変動顧問のロス・ガーナー教授は3月1-2日に開かれたオーストラリア農業資源経済・科学局(ABARES)の2011年outolook会合で、世界食料価格は、人口増加、所得増加、農作物収量増加の減速、気候変動の影響を反映、今世紀前半(つまり2050年まで)は高止まりすると述べた。
「気候変動の農業生産への大きな影響は将来のことだが、既に何らかの影響は現れており、極端な天候事象の激化は、科学が我々に語ることの一つだ」と語ったそうである。
Australian Farms `Vulnerable' to Climate Change,
Adviser Garnaut Says,Bloomberg,3.3
http://www.bloomberg.com/news/2011-03-02/australian-farms-vulnerable-to-climate-change-garnaut-says.html
今世紀前半の世界食料市場は大荒れが続く。
「こうなれば、日本が食料を安定的に確保するためには、小麦・トウモロコシ・大豆の輸入を減らし、それに代わる国内食料資源を確保するしかない。価格高騰は、これらの輸入減らしに焦点を当てた自給率向上に断固たる決意で取り組めという市場からのシグナルと受け止めるべきである。そんな時に、輸入品の大洪水を呼び込む自由化推進だ。それは、食料安全保障という日本の生命線を断ち切るだろう。日本農業丸、日本地方丸どころか、本船の日本丸も難破する恐れがある」(北林寿信 「食料高騰時代突入 「日本丸」難破の恐れ(TPP反対企画 第3弾) 現代農業 2011年4月号 345頁)。TPPどころではない。
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