農業情報研究所農業・農村・食料食糧問題ニュース:2012年6月1日

FAO 持続可能な農業への転換と食品廃棄の削減で世界人口を養うことができる

 国連食糧農業機関(FAO)が5月30日、飢餓撲滅と持続可能な農業・食料システムへの移行を求める地球サミット(リオ+20、6月、リオデジャネイロ)に向けた政策文書を発表した。それは、飢餓の撲滅なしには持続可能な発展は実現できないとした上で、現在の食料消費パターンが続くかぎり、世界食料生産が60%増えなければ90億に達する2050年の世界人口を養うことはできないが、持続可能な農業に転換し・食品廃棄を減らし・過剰な消費をやめれば、それほどの生産増加がなくても世界人口を養うことができると言う。

 私自身はかつて、2050年までに食料生産を70%増や必要があり・それは十分に可能とする2009年11月のローマ世界食糧安全保障サミット準備会合に向けたFAOのディスカッション・ペーパーについて、「都市化、工業化、さまざまな開発行為によってある程度の耕地が失われるのは避けがたい。バイオ燃料作物の増大が食料生産用地を大きく削り取ることも起きるだろう。世界各地で進む土壌劣化(作物残滓の土への還元の慣行の衰退、化学肥料と農薬の多投、乾燥・半乾燥地での作物灌漑、森林破壊に伴う浸食、養分欠乏、物理的構造の退化、塩化や化学物質汚染など)や気候変動という厳しい収量減少要因も加わる。さらに、灌漑のための大量取水と工業用水・家庭用水取水の増加が世界中で河川水、湖沼水、地下水の持続不能な減少を招き、流域森林や湿地の破壊がこれに拍車をかけているとき、これほどの食料増産に必要な水はどこから出てくるのだろうか。FAOの見方はいささか楽観的に見える」と書いた(農業生物多様性の喪失と第二の「緑の革命」 科学 2010年10月号)。

 その際、「農業知識・科学・技術が飢餓と貧困の削減に貢献するためには、生産機能だけでなく、農業が本来持つ環境サービスも重視する多機能的アプローチが必要である、地域の伝統的な農業知識も動員することで水の利用可能性の減少や水質悪化、土壌の劣化、生物多様性や農業生態系の機能喪失、森林破壊などの自然資源への圧力の増加に対応しなければならない・・・。そうすることによってのみ、生産性を維持し、増加させることができる」、というワトソン元IPPC(気候変動に関する政府間パネル)議長ほか5名を共同議長として2002年年に世界銀行が発足させた「開発のための農業知識・科学・技術国際アセスメント」の結果にも触れておいた。

 このように持続可能な農業への転換と、世界食料生産の半分にもなり得る食品廃棄・ロスの削減で、将来の地球人口は十分に養えるはずだというのが筆者の年来の主張であった。

 FAOも、漸くこれを認めたのだろうか。この政策文書は、農業・食料システムは、土壌劣化や水の消尽j、温室効果ガス排出の削減など、環境悪影響を減らすべきである。他方、人びとは世界の人間消費向け食料生産の3分の1に上る年13億トンもの食品ロスと廃棄を減らす必要があると言う。

 遅ればせとはいえ、増産一辺倒からのこの転換は画期的であり、大いに歓迎すべきことである。ただ、それをどう実現するかが問題だ。文書は、「所得成長パターン・食事の選好の変化・食品廃棄のレベル・農業生産の非食料用途への利用に影響を与える「大胆な政策決定」が必要、サミット参加国政府は飢餓と栄養不良の削減の努力をスピードアップし、食料と土地への権利に関する国連の自主的ガイドラインを利用することを約束すべきだと言う。FAOの方向転換にもかかわらず、飢餓撲滅に向けての前途が多難であることに変わりはない。