農業情報研究所>農業・農村・食料>食糧問題>ニュース:2012年7月19日
世界食料危機再来?
シカゴ商品取引所のトウモロコシと大豆の先物相場が世界食料危機の最中にあった08年のピークを連日超えている。小麦はブッシェル12ドルを超えた08年のピークにはまだ遠いとはいえ、18日にはロシアの禁輸等による高騰時のピークを超え、08年4月以来初めて9ドルを突破した。一部に07-08年の世界食料危機の再来を恐れる声も出始めたようだ。
ただ、これについては、なお慎重を要する。というのは、07-08年の世界食料危機、アフリカ、中米、アジア諸国で起きた暴動の大きな要因となったのは、タイ・タクシン政権の米価政策を発端とする国際米価の暴騰であった。現在の国際米価は06-07年に比べれば倍のレベルにあるとはいえ、インドやベトナム、カンボジア等の増産による供給力増強で、トン1000ドルを超えた08年のピークに比べると大幅に安い600ドル程度(タイに匹敵する輸出国となったインドやベトナムの輸出価格はこれより一段と安い)にとどまっている。世界各地で起きた米騒動の再来は予想しがたい(モンスーンの遅れによるインドの米の減収が懸念されているが(Slow
monsoon threatens India crops,FTcom,7.19)、その影響はまだ見極めがたい)。
ただ、トウモロコシや大豆に依存する家畜飼料→肉・卵・乳製品や食用油の値上りは必至で、今後の推移によっては小麦に依存するパン、麺類などの食品の値上りもあり得るだろう。小麦についてはアメリカのみならず、ロシアやウクライナの干ばつによる不作の予想も出始めており、これらの国が再び禁輸や輸出規制に踏み切ることもあり得るからだ。これらを輸入に頼る日本にも、何らかの影響が及ぶのは避けられないないだろう。