農業情報研究所農業・農村・食料食糧問題ニュース:2012年10月15日

アメリカ干ばつよる国際穀物価格高騰でマラウィが食料危機?

  ブランドン・ハニカットには忘れらない年になった。ネブラスカ州ハミルトン郡の若者は父・兄とともにハイ・プレーンの2600エーカーの畑を耕している。5月にはトウモロコシと大豆の収穫は”驚異的”になるのが確実に見えたものが、災厄に転じた。

 しばしば38℃を超える気温を伴った熱波と干ばつが作物を燃え上がらせた。3分の1を失い、農場地下灌漑水の汲み上げによってのみ救われた。

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 世界の裏側、マラウィのナンブーマ近くのMphaka村に住むマリー・バンダにとっては、子どもを満足に養えず、一人は栄養不良で病院に行かせた年になった。

 政府ヘルスワーカーパトリック・カムジツは、「我々は子どもの間に飢えが広がるのを見ている。去年、トウモロコシの値段は倍に上がった。家族は一日に一食か二食しか摂れないのが普通だが、いまでは一食も難しい」と言う。

 ハニカットとバンダは食料よって結びついている。彼女が支払わねばならないものは、大部分、ブランドンのような農民がどれだけ収穫し、輸出するかで決められる。今年、アメリカのトウモロコシ収穫は15%減り、収穫の40%近くが車の燃料の製造に使われた。その結果が、国際市場に出る食料の減少と価格高騰であり、それが世界中の人々を苦しめている。

 以上は、9月28日付のイギリス・オブザーバー紙に掲載された記事の冒頭部分である。

 The timebomb setting nation against nation,The Observer,12.9.28

 07-08年の国際商品穀物(小麦、トウモロコシ、大豆、米)の高騰がもたらした世界食料危機以来、これら穀物価格高騰を食料危機と直結させ、貧しい国の食料安全保障のためには何よりもこれら価格の安定を確保することが重要という考えが定着したようだ (それまでは、飢餓とは激烈な干ばつや戦乱等が引き起す絶対的食不足がもたらす局所的現象であった)。今回のアメリカの干ばつを契機とする価格高騰に際しても、「食料価格乱高下」に正面から取り組んだ2011年G20農相会合を主催したフランスの熱心な提唱で、世界食料デーに合わせた10月16日、G20閣僚級会合(FAO主宰、ローマ)がこの問題に取 リ組む。

 しかし、それが世界の食料安全保障、世界食料危機の回避にどれほど役立つは、はなはだ不透明だ。これら国際商品の価格高騰と世界食料安全保障・飢餓の一般的関連性は、今までのところ誰も確認していないからである。世界の慢性的栄養不良人口は8億700万にのぼるとした最新のFAO報告(State of Food Insecurity in the World 2012)も、国際食料政策研究所(ifpri)の世界飢餓指数(2012 Global Hunger Index)も、決してそんなことは確認していない。

 冒頭に取り上げたアメリカの干ばつ不作とマラウィの飢餓との関連性も、そう言われれば誰もがな納得してしまいそうだが、実は(直接的)関連性はまったくない。下図に見る通り、マラウィの主食穀物であるトウモロコシの価格は昨年末以来急騰している(アメリカの干ばつの影響が現れる12年7月以降については、未だデータがないけれども)。


(データ出所:FAO:http://www.fao.org/giews/pricetool/)

 ただし、これはトウモロコシの国際価格が上がったためではない。マラウィのトウモロコシ国内供給量は256万7000トン(飼料向け45万トン)で、輸入量は5万5000トンにすぎない (2009年、FAOSTAT)。トウモロコシの国内価格が国際価格の影響を受けることなど、そもそもあり得ない。実は、最近の価格上昇の最大の要因は、IMFに強要された輸出振興のための平価切下げである。通貨価値下落が食料品インフレを昂進した。中南部を襲った昨季の干ばつがこれに拍車をかけた。灌漑施設は乏しく、一部地区の農民は収穫皆無となった。

 Malawi: Facing the Costs of Food Insecurity and Rising Prices,ThinkAfricaPress,9.28

 バンダの苦境はアメリカの干ばつと何の関係もない。こんなレトリックは食料問題の真因を隠し、その解決の道を誤らせだけであろう。