農業情報研究所農業・農村・食料食糧問題ニュース:2012年10月16日

アメリカ干ばつよる国際穀物価格高騰でマラウィが食料危機?(続)

   前篇:アメリカ干ばつよる国際穀物価格高騰でマラウィが食料危機?

  それでは、マラウィ食料問題の根本的原因は何なのか、解決の道はいかなるものか。上掲Think Africa Pressのリポートの著者である農業アナリスト、エドワード・ジョイが示す答えの一例を紹介しよう。

 マラウィの多くの家庭が日々の食料の調達に苦しむのは、何よりも、貧困とその悪循環のためである。都市の貧しい家庭も、生産者でありながら多くの食料を購入に頼るのが一般的な農村家庭も、食料ストックや売買可能な資産を欠くために、食料不足や高価格を乗り越えるのに苦闘している。年間を通しての価格乱高下にも苦しむ。生産期間に生じた借金の返済や適切な貯蔵施設の欠如のために、生産者は価格が最低の収穫直後に売り、価格が最高になる端境期に買うことになる。さらに、貧困は食料生産や教育への投資も制約する。

 どんな解決策があるのか。平価切下げによる輸出振興といっても、主要輸出品がタバコや砂糖jに限られるこの国では経済浮揚・貧困削減効果はほとんどない。インフレによる賃金の目減りが需要を低迷させ、経済は却って悪化する。平価切下げは燃料・肥料価格の上昇を通じて農業投資も制約する。1990年代、世銀の構造調整プログラムで民営化が要求された農業開発販売会社(ADMARC)は、食料不足地域に配る十分なストックがあると主張するが、効果的活動ができかどうか疑問で、買い入れ価格の低さや汚職で農民グループの不評をかっている。

 平価切下げで国際社会(援助供与者)は食料援助や政府予算支援を改善しなければならないはずだが、動きは鈍い。政府やNGOは、引き続き、市場、信用へのアクセス、貯蔵施設改善に努める必要がある。

 リスク分散のための作物の多様化に向けた農業への介入も助けになる。トウモロコシから干ばつや少肥に耐えるソルガム、ミレット、キャッサバ、豆類、樹木作物などへの転換は、気候変動や肥料価格上昇に対処する生業的農家を助ける。しかし、これにも援助が必要だ。

 小規模灌漑施設の設置や土壌水分の維持を助ける保全農業のような農業技術の採用は、南部特有の不規則な降水の影響を減らすことができる。育種やミネラル肥料によるトウモロコシ穀粒の栄養改善は、エネルギーと微量栄養素の必要量をトウモロコシだけで満たす最貧家庭の助けになる。

 確かなことは、援助供与者の介入は、必ずしもマラウィを助けないということだ。援助の条件が市場の大きな変動と不確実性を引き起してきた。IMFの要求した平価切下げと、世銀の要求よるADMARCの民営化がその典型例だ。

 それでも、援助供与者は、現在マラウィを傷つけているプライス・ショックを緩和するために、人道的見地から行動すべきである。 


 FAOは今日、農業生産増大、市場の透明性改善、食料価格乱高下対策などをテーマに、加盟国閣僚級会合を開く。作物多様化や保全農業の促進など、決して議論されることはないだろう。 眼中にあるのは、気候変動や水・健全な土地の希少化とともに存続がますます難しくなる*大規模モノカルチャーが生み出す国際商品作物―小麦、トウモロコシ、大豆―の、収奪海外農地での生産も含めた生産と市場(食品・飼料・バイオ燃料)の護持だけである。あたかも、それのみが世界を養えるかのように。

 *ますます暑くなり、雨が少なくなる気候に耐えられなくなったアメリカ・カンザス州のコーンベルト地区農民も、すでにここ3年、トウモロコシから水要求の少ない小麦、ソルガム、さらにはライ小麦への転換を進めているという。気候変動の進展とともに、さしものモノカルチャー王国、コーンベルトも消滅するかもしれない。 そうなれば、これはもう価格乱高下などといった類の問題ではない。

 Corn Belt Shifts North With Climate as Kansas Crop Dies,Bloomberg,10.15