農業情報研究所農業・農村・食料食糧問題ニュース:2013年6月27 

米国務省 モンサント最高幹部に「世界食料賞」 怒り心頭のニューヨーク・タイムズ・コラムニスト

 6月19日、米国国務省が農業のノーベル賞と言われる世界食料賞(World Food Prize)の今年の受賞者に、モンサント社の副社長兼最高技術責任者のロバート・フラリィ(Robert T. Fraley)を含む3人のバイオテクノロジー研究者・技術者を選んだ。

 モダンな植物バイオテクノロジーの創建、開発、応用における彼らの画期的業績に栄誉を与える。「彼らの研究は、農民が収量、病害虫抵抗性、度を越えた暑熱や干ばつのような気候の極度の変動に耐える能力が改良された作物を育てることを可能にした」と言う。

 Three Scientists Win 27th Annual World Food Prize,US Department of State (press release),13.6.19
  http://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2013/06/210849.htm

  米国政府とバイテク企業の癒着ぶりをこれほど露骨に示す出来事はほかに知らない。イギリス政府の”GM作物:遺伝子植民地主義”(GM crops: the genetic colonialists,Gaurdian,6.24)も顔負けだ。ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストであり、食料と健康と環境の死活的に重要な結びつきを探求した著書・“Food Matters”などの著者であるMark Bittmanが、早速怒りの声を上げたのも無理はない。

 The True Deservers of a Food Prize,The New York Times,13.6.26

 遺伝子組み換えが収量を大きく増やしたとか、化学物質使用を減らしたとか、食料供給を改善したとか、確かな証拠を見つけるのは難しい。

 適格者はほかにいくらでもいる。

  ステムボーラ―をトウモロコシなどから引き出し・近くに植えた植物に引きつけるサブサハラ・アフリカの害虫コントロールシステム(“push-pull” system)を開発したZeyaur Khan。このシステムを使う農民の生産コストは低く、収量が倍になることさえよくある。害虫抵抗性の遺伝子組み換え(GM)Btコーンで、こんな話は聞いたことがない。

 飢餓を終わらせるためには、まず何よりも女性に対する暴力を終わらせねばなfらないと主張する国際農民組織・ La Via Campesina。この方が世界食料賞の”マジック・ビーン”の話より、はるかに力強い。

 食料不安について学び、それに取り組むために世界中を訪ね歩く倦むことなき旅人・食料への権利に関する国連特別報告官のOlivier De Schutter(オリヴィエ・ドゥ・シュッテル)。彼は、化学的アプローチは借金と化学肥料・農薬・GM種子の依存を高めるだけと、”agroecological”な農業方法を促進する。飢餓を技術的問題と見做し・生産を増やすことだけを要求する伝統的レシピィでは飢餓を終わらせることはできないと主張する。

 家畜を養うために穀物を育てるのは嘆かわしい不効率、世界は既に十分なカロリーを生産している、真の問題は経済的不平等だと説くFrancis Moore Lappé

 ラテン・アメリカの農民と協働、収量の顕著な増加は作物の多様化、害虫統合管理、栄養循環で達成できる、小農民は、しばしば農村経済の土台を掘り崩し・食料安全保障を危うくする資本集約的輸出作物にシフトすることなく、もっと生産できることを立証するカリフォルニア大学バークレー校のMiguel Altieri

 さらにまた、ワールドウォッチのLester Brown、アイオワ大学のMatt Liebman、インドのヴァンダナ・シバ(Vandana Shiva)。彼ら・彼女らを受賞者リストから外すのも難しい。

 彼は結ぶ。

 「今日、飢餓は十分な食料がないから起きるのではない。一部の人々が買えないから、あるいは生産できないから起きるのだ。飢餓は不平等の象徴なのだ。金持ちで飢える人はいない。飢餓の軽減とは、食べる権利は息をする権利と同等である認めることだ。食料の世界の真のヒーローは、これを認め、世界の大多数の人々―そして大多数の農民が依存する低投入農業の改善のために働く 人々だ。この種の仕事で”賞”に値する人は何百人もいる。この中に、モンサントのお偉方は含まれない」

 なお、増加する地球人口は遺伝子組み換え技術を使った「第二の緑の革命」によってしか養えないという米国流の考えかたについては、小稿:「農業生物多様性の喪失と第二の「緑の革命」 科学(岩波書店) 2010年10月号) で十分に批判しておいたはずである。