ボリビア・アマゾン先住民 コロンブス以前の灌漑システムで洪水に立ち向かう

農業情報研究所(WAPIC)

09.8.20

  最近のBBCニュースによると、昨年、50年来の大洪水に襲われて家も、作物もすべて失ったボリビア・アマゾンの先住民が、何世紀も前の灌漑システムを使って毎年の洪水に立ち向かおうとしている。これは、北西部ベニ県県都・トリニダ近くのNGOが2年前から始めた大胆なプロジェクトで、気候変動に伴う極端な気象事象から彼らを護り、森林破壊を減らし、食料安全保障を改善し、食事の改善も約束するだろうという。

 Bolivians look to ancient farming,BBC News,8.18
 http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/8187866.stm

 このシステムは、水路の周りに2mの高さの畝(スペイン語では”カメリョーネス”、原住民の言葉では”スカ・コリュ”と呼ばれる)を盛り上げたものだ。カメリョーネスは、洪水シーズンには種や作物が洗い流されるのを防ぎ、乾季には水路の水が水や栄養分を作物に提供する(下図ー左が現在のシステム、右がカメリョーネス・システム)。

 

 紀元前1000年から紀元1400年まで、コロンブスのアメリカ大陸発見以前のベニの文化は、これに類似のシステムを使っていた。専門家は、カメリョーネス・プロジェクトの最大の特徴は、「現在ベニで暮らす貧しい共同体が、同じ問題を解決するために同じ地域でコロンブス以前の先住民文化が開発した技術を使うことにある」と言う。古い共同体も、モダンな共同体も同じ問題―干ばつを伴う定期的洪水―に直面する。「洪水は発展と偉大な文明の開花の基盤だった」。

 このプロジェクトに弾みを与えたのが、去年の50年来とも言われる大洪水だった。この洪水では、ベニの人口の4分の1に当たる12万人が被災した。この経験が、地域の婦人のプロジェクトへの参加を促した。トリニダ近くの44歳の一婦人は、水は、米も、トウモロコシも、バナナも、たまねぎも、さらに家まで持っていってしまった、すべてを失いたくないから、カメリョーネスを作る工事で働いていると言う。現在、およそ、400の家族が、主にトウモロコシ、キャッサバ、米を育てる五つのサイトで、プロジェクトに参加している。

 多くのサイトは未だ実験段階だが、生産性向上の兆しが見える。貧しい人々に気候変動への適応の可能性も提供することから、オックスファムも、プロジェクトを一部支援しているという。