ブラジル トウモロコシ不足で米国のGMトウモロコシ輸入を準備 米国中西部農民の救世主に?

農業情報研究所農業・農村・食料ラテン・アメリカニュース:16年8月12日

 フィナンシャル・タイムズ紙によると、ブラジルが米国から遺伝子組み換え(GM)トウモロコシの輸入を始める準備を進めている。USDA当局者は、ブラジル農業・畜産・食料省が米国からのGMトウモロコシの承認を要請するだろうと言っているそうである。

 トウモロコシはブラジルにとって輸出所得源や国内畜産の飼料として重要だが、通貨下落による輸出増加や干ばつによる減収で国内供給は大幅に不足、価格が急騰している。トウモロコシの最大の産地であるマット・グロッソ州のトウモロコシ平均価格はブッシェル当たり4.37ドルで、昨年同期の1.90ドルの倍以上になっている。他の地域ではブッシェル6.96ドルにもなっていいる。しかし、米国・シカゴではブッシェル3.2ドルほどで取引されている。

 国の養豚・養鶏部門を支援するために、ブラジルは今年1月以来、既に55万トンのトウモロコシを主にアルゼンチンとパラグアイから輸入した。ブラジル政府は今年、 南米南部共同市場(Mercosur)以外の国からの輸入関税を8%からゼロに引き下げた。しかし、USDAラテン・アメリカ局の最近のリポートは、ラテン・アメリカは2017年までにトウモロコシを使い果たすと警告している。畜産飼料を確保する方策として米国からのトウモロコシ輸入が浮上したわけだ。

 ただし、米国のトウモロコシはほとんどがGMトウモロコシだ。国家バイオセーフティー技術委員会は来月初めに会合を開く予定だ。そこで米国トウモロコシの購入が承認されれば、9月から11月には米国からの輸入の道が開けるという。

 Brazil set to import GM corn from the US,FT.com,16.8.12

 Severe drought and falling stockpiles prompt to seek genetically modified US corn,Financial Times,16.8.12,p.18

 ブラジルはGM作物開発で世界をリードする国の一つ、米国に次ぐ世界第二のGM大豆・トウモロコシ・綿栽培国だ。GM規制を理由に米国トウモロコシの輸入を禁じることはない。シカゴ・トウモロコシ相場は2006年秋以来の最低水準に落ち込んでいる(穀物・大豆等先物(期近)価格の長期推移)。ブラジルは砂糖価格の高騰でサトウキビ・エタノールも不足、米国のトウモロコシ・エタノールのブラジルへの輸出機会も増している(U.S. ethanol industry finds sweet deals in Brazil as sugar prices soar,Reuters,16.8.5)。ブラジルは価格低迷にあえぐ米国トウモロコシ農民の救世主となるかもしれない。