農業情報研究所


米国グローバル化でリンゴ農家が連邦援助要請へ

農業情報研究所(WAPIC)

01.5.14

 オンタリオ湖南岸は果樹栽培に好適な気象条件に恵まれて、「フルーツ・ベルト」をなしている。ここのリンゴ農家は、200年近く連邦援助を受けることなく繁栄してきた。しかし、この3、4年、リンゴ市場は非常に微妙で、1997年、98年に襲った破滅的降雹のような一時的逆境も財政破綻をお膳立てするような状態にある。ニュー・ヨークの大都会から遠いこの地のリンゴ農家は、収穫の半分以上を加工あるいはジュースに向けており、外国からの競争に特に脆い。1996年以降、米国のジュース輸入は急増し、価格は急落した。精妙なインターネット販売を利用するようになった外国のアグリビジネスは、アスパラからニンニクまで、あらゆる産品の米国での供給ギャップを即座に埋めてしまう。

 この状況下、ニュー・ヨーク・ファーム・ビューローの副会長でもある一リンゴ農民が、連邦政府に直接援助を求める決意をした。議員の支援の約束も取り付けた。いまや、ミシガン、ペンシルバニア、バージニアのリンゴ農家もこの運動に加わった。昨秋、議会は、リンゴ農家が「市場損失」を埋め合わせるのを助けるために、9000の国内リンゴ農家への1億ドルの援助を承認した。しかし、政府は洪水・台風・虫害による損失をこうむった果樹・野菜農家に僅かな支払いをしただけであった。リンゴ農家は、強力なアメリカ・ファーム・ビューロー連盟に支援されて、今年は5億ドルの援助を要求した。議会には、ヒラリー・クリントン、ロバート・C・バードなど多くの支援者がいる。

 今年は、アイダホのポテト農家、アリゾナのレモン生産者、オレゴンの梨農家、カリフォルニアのアボガド農家も同様の援助を求めている。アメリカ・ファーム・ビューロー会長のボブ・ストールマンは、議会に対して、果樹・野菜農家援助のための年間15億ドル(今後10年間で150億ドルになる)の臨時援助基金承認を要請している。連邦政府は、穀物・棉農家に補助金を支払い、乳製品価格の支持のために牛乳を買入れ、国内のビート・ケーン生産者の保護のために砂糖輸入割当を実施し、ピーナツとタバコの価格の下支えのために生産・土地割当を設けているが、果樹・野菜農家の運動は、これらとの公平を求めるものである。

 このような動きには反対もある。「21世紀の農業」に関する議会への最近の報告の起草を助けたネブラスカのアグリビジネスの支配人であるジョン・B・キャンベルは、果樹・野菜農家への政府介入は、他の農家の新規参入を招き、生産を促進し、問題を一層混乱させることで、回復不能な災厄を生むという。フルーツ・ベルトの多くのリンゴ農家は、このリスクを引き受けるつもりでいる。しかし、援助を支持するする若干のリンゴ農家でさえ、不安を感じている。彼らは、政府の直接支払いよりも、作物保険計画のような代替セーフティ・ネットをもつべきであり、何らかのベターなセーフティ・ネットなしでは、国内果樹・野菜産業は、いつの日か消滅するであろうという。

 以上は下のワシントン・ポスト紙の報道を要約したものである。

 Farm Policy's Blossoming Dilemma,The Washington Post,01.5.10(Page A01)

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