米国:大規模農業事業者が作物補助金獲得に狂奔、違法行為も―GAO報告

農業情報研究所WAPIC)

04.6.19

 納税者が支える農業補助金が、まともに農業活動をしていない人々に支払われている可能性がある。米国議会検査院(GAO)が16日、このように指摘する報告書を公表した(⇒Farm Program Payments: USDA Needs to Strengthen Regulations and Oversight to Better Ensure Recipients Do Not Circumvent Payment Limitations)。会社、パートナーシップ(*)、合弁企業、これらの大規模農業事業者が連邦政府の作物補助金の大きな部分を刈り取っており、受給資格を得るために、これらの取引や農場運営組織が計略的に利用されている恐れがあると言う。

 連邦政府は、コーン、綿花、米、小麦、大豆などの主要商品の生産を助けるために、年々150億ドルほどにのぼる農場プログラム支払いを行ってきた。1987年の「農場プログラム支払い健全法(The Farm Program Payments Integrity Act)」は、支払いを「積極的に(actively)に農業に従事する」個人と団体に限定すべきと定めた。GAOは、これが適正に執行されているかどうかを調べるために、米国農務省(USDA)の規制がどれほど有効に支払いを限定しているか、USDAの監視は適切に行われているかを精査、支払いの団体のタイプへの配分状況を分析した。

 支払い受給者が農業に積極的にかかわっていることを確認するための規制については、USDAは、これを確認するための測定可能な基準を明確に定めていない。従って、農業事業に限定的にかかわるだけの個人が受給資格を受け取るのを許していると指摘する。87年法では、支払い制限をかいくぐるための、あるいはそのような効果をもつ計画あるいは計略を採る者には、そのような計画または計略を採択した年、またはこれに続く年、受給資格が与えられないとされている。しかし、USDAの規制は、一定の取引や農場運営組織がこのような計画または計略と見なされるかどうかに関して明確な定めを欠いている。このために、USDAは、一定の農業事業がこのような計略であるかどうかの問題を追及するのを躊躇う恐れがあると言う。

 GAOは、USDAの監視も有効に行われていないと指摘する。USDAは、条件が満たされるかどうかを決めるための農場事業計画の妥当なサンプルを吟味しておらず、従って正当な受給資格者だけが支払いを受け取っていると確認していない。GAOが2001年について調査した農業事業のおよそ半分について、現場当局は、従業員が積極的に農業に従事したかどうかを決める利用可能な手段を利用しなかったという。

 2001年に支払われた補助金170億ドルのうち、59億ドルが14万のこれら団体に配分されていた。USDAのデータのGAOによる分析によれば、会社と一般的パートナーシップが、これら団体のそれぞれ39%と26%を占める。後者は団体への支払いの45%(27億ドル)を受け取っており、パートナーが増えるほどに受給額が増える。一農場(農家)が受け取ることができる補助金の額には上限がある。実際にはほとんど農業に従事しないパートナーと組むことで、受給額が増やせるわけだ。

 GAOは、現在の規制のこれらの問題を改善するようにUSDAに勧告した。USDAは大部分の勧告を受け入れたが、農業に積極的に従事しているかどうかの決定や事業が支払いの制限をかいくぐる計略かどうかの評価には、現在の規制で十分と答えたという。

 関連報道(Big farm operations skirt law, GAO says,Omaha World Herald,6.16)によると、上院財務委員会委員長を務めるグラスリー・アイオワ選出上院議員は、USDAが監視を強めれば、「政府は年々農家支払の数百万ドルを節約できる」、農家支払について我々が直面している最大の問題は、「非農業者が地代や地価に及ぼしている影響だ」と言う。彼はかねて、巨大農業(megafarming)事業への大量の補助金支払いを激しく批判するとともに、一層厳しい監視を要求してきた。

 この報告に「納税者」がどう反応するかはまだ分からない。途上国をはじめとする諸外国からの激しい批判に直面する米国農業補助金だが、内部からの批判も一層高まる可能性がある。

 *partnership。複数の者が営利の目的で金銭・労力等を出資して事業を行う契約関係を意味し、日本の民法上の組合、合名会社に相当する。