米国食用動物獣医の不足が食品安全を脅かすー米国大学の新研究

農業情報研究所(WAPIC)

06.6.2

 AP通信が伝えるところによると、将来予想される食用動物獣医の不足により、食品安全と破局的な動物病の勃発に対処する米国の能力が脅かされているという新たな研究が発表された。この研究は獣医団体連合組織が2004年に委嘱し、カン ザス州立大学経営管理学部が行ったもので、2016年までに家畜を専門とする獣医が大きく不足すると予測している。

 この不足は、米国人が鳥インフルエンザや口蹄疫のような病気にますます気づくようになり、狂牛病への不安を高める日本などにより肉輸出が減る状況のなかで起きる。アメリカ獣医学協会(AVMA)動物福祉部長であるライル・ヴォーゲル博士は、適切な病気の監視を行う農村コミュニティーの現場における獣医の不足は、わが国の食品安全を脅かすと語ったという。

 Study: Animal vet shortage may affect food,AP via Yahoo!News,,6.1

 この研究は、食用動物獣医の稼ぎは小動物獣医の稼ぎよりも少ないという主張が間違っていることも明らかにした。AVMAの2003年のデータによると、すべての獣医の4%が専ら大型動物を扱っている。その年間所得は、専ら小動物を扱う獣医の所得を6000ドル上回った。

 しかし、徹夜で分娩に立ち会うための胸当て付き作業ズボンやゴム長がこの仕事の付き物になっており、この魅力を削ぐ外見が農村に入ろうとするが学生の数を減らしている。研究は、奨学金返還免除その他の優遇措置を強調する募集戦略の改善や農村獣医のイメージの改善が学生を引きつける最も期待のできる方法だと示唆しているという。議会は2003年に新参獣医の奨学金返還を免除する立法を承認したが、ヴォーゲル博士はこのプログラムが適切な資金を受け取ってこなかったと言う。

 食用動物獣医師の不足は米国農務省(USDA)の動植物検疫局(APHIS)のような政府機関にも影響を及ぼすが、USDAの当局者は報告を見ていないからと、コメントを拒んだという。しかし、現在でもそうだが、少なくとも狂牛病の「適切な監視」もできないのでは、米国のみならず、世界中の食品安全が脅かされる。