米農務省は農産物輸出額を誇張 最も留意すべきは国内農業政策ー米農業誌編集者

農業情報研究所(WAPIC)

06.6.13

  米国で最も伝統ある個人金融・ビジネス誌の一つであるKiplinger Agricultural Letterの編集者が、米国農務省(USDA)は、米国農業の輸出依存度ー米国の農業生産額に対する米国の農産物輸出額の比率ーを誇大に評価していると厳しく批判している。彼は、ドーハ・ラウンドや農業法など米国政府の農業政策は事実に基づかねばならないと主張する。

 U.S. officials exaggerating exports' value,Telegraph Herald (Dubuque, IA),6.11

 ベナマン前農務長官は、米国農業生産の25%が輸出されると言い、ジョハンズ現長官は最近、米国農家の収入の27%は輸出から来ると語った。しかし、この編集者・Maixnerは、Kiplinger Agricultural Letterの4月28日号で、これらの数字はどちらも間違っている、米国農業者と牧畜業者の輸出額は生産額の8%にしかなならいと書いた。何故このような違いが生じるかと言えば、USDAの言う輸出額は商品が農場を去ったあと、輸送・加工・パッケージング等々の間に追加される額を含むからだという。

 例えば、日本に輸出されるステーキには、輸出ターミナルで1ポンド当たり5.50ドルの値札が付けられる。しかし、生産者はそれを販売するときに3ドルを受け取るにすぎない。生産者は輸出で3ドルを得るにすぎないが、輸出額はこれに2.5ドルを付け加えることで水増しされるわけだ。

 USDAのチーフ・エコノミストであるKeith Collinsは、Maixnerの計算方法は正しいが、輸出額が農場価額の8%でしかないならば、2006年の推定輸出額・635億ドルがたったの190億ドルになってしまい、「これはクレージーだ」と言う。

  しかし、Maixnerは、2003年11月に発表された貿易データのUSDAによる最新の分析でも、ベナマン前長官やジョハンズ長官が言うような数字は出てこない、数量で見た米国農業の輸出シェアの1996年以来の平均は22%だが、価額で見た1998-2002年の平均輸出シェアは17%だったと言う。

 農業団体、政治家、貿易交渉官は、農業プログラムを提案し、農業法を起草し、票を集め、貿易交渉を進めるために正確で、確定的なデータを必要とする。数字によりすべてが違ってくるだろう。

 彼は、「我々は何もかも輸出するわけではない。多分、我々が何よりも留意する必要があるのは国内農業経済だ」と主張する。これは、ドーハ・ラウンドで米国が強硬に主張する市場アクセスの大幅拡大が必ずしも米国農業者に最大の利益を保証するとは限らないことを示唆する。