米議会 補助金削減なしの新農業法に合意 ドーハ・ラウンドで食料危機は止まらない
08.4.29
米国議会上下院が4月25日、今後5年間で2900億ドル(約3兆円)の支出を認める新たな農業法案に基本的に合意した。昨年10月に期限切れとなりながら再三再四延長適用されてきた2002年農業法に代わる新たな農業法案は、既存の農業者補助金(直接支払)をほとんど減らすことなく、フード・スタンプやその他の栄養プログラムに104億ドルを追加する。年に52億ドル(5400億円)ほどの現在の直接支払は、僅かに4000万ドル(41億円)減るだけだ。
Tentative Deal Reached in Congress on Farm Bill,The New
York Times,4.26
http://www.nytimes.com/2008/04/26/washington/26farm.html?ref=us
Negotiations On Farm Bill Add
Billions For Nutrition,The Washington Post,4.26
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/04/25/AR2008042503280.html?wpisrc=newsletter
このような法案に大統領が署名するか、拒否権を発動するか、なおはっきりしていない。しかし、この時期に及んで補助金削減のメドが立たないことは、WTOドーハ・ラウンドの早期妥結の見通しがますます遠のいたことを意味する。大量の農産物の安値輸出を可能にする補助金を温存する一方で、途上国には一層の市場開放を迫る、こんなことを途上国が受け入れるはずがない。そんなことになれば、途上国は食料自給力をますます削がれ、食料品価格の世界的高騰による現在の食料危機も深まるだけだ。
EUのマンデルソン通商担当委員は、「ドーハは、農産物貿易を歪曲し、途上国の輸出機会を減らし、・・・補助された輸出品を市場に氾濫させ、途上国における国内農業生産と長期的農業発展の土台を掘り崩す先進国の補助金を削減する協定を含むから、とりわけ価値が高い」、「食料価格高騰は、ドーハ・ラウンドを通して農業補助金を改革する先進国の約束を強化する」と、ドーハ・ラウンド妥結を急かす。
Mandelson: right policies
can help developing countries benefit from high global food prices,European
Commission,4.17
http://ec.europa.eu/trade/issues/bilateral/regions/acp/pr170408_en.htm
しかし、現実は彼が言うことと似てもつかない。
フランスのバルニエ農相は、食料需要の増加への対応として、アフリカやラテンアメリカはEUの共通農業政策(CAP)の独自版を採用すべきだと言う。フィナンシャル・タイムズ紙によれば、CAP批判者は食料価格高騰と不足の脅威に農産物貿易の自由化で備えよと言うが、バルニエ農相は、途上国は、逆に、ヨーロッパに倣い、開発援助を自給的地域農業ブロックの形成に振り向けるべきだと言う。
彼によれば、「我々がいま世界で目撃していることは行き過ぎた自由主義の結果である」、「食を市場の慈悲に委ねることはできない。公共政策、介入と安定化の手段が必要だ」、「CAPがいいモデルだ。それは、自身を養うために生産することを可能にする政策だ。西アフリカ、東アフリカ、ラテン・アメリカ、地中海南岸、すべてが地域共通農業政策を必要としている」。EUは、これら地域のCAP採用を助ける資金とノウハウを提供する。貧しい国は、自身を養う前に輸出用の換金作物の栽培に走るべきでない。
彼は、WTOが「食料と農業の関係を議論する正しい場所」であるかどうか疑い、ドーハ・ラウンドの結果がどうなろうと、この問題を議論する正しい場がどこであるかを問う必要があると言う。
EU's food policy 'is answer' to high prices,Financial Times,08.4.28,p.1.